2013年1月27日日曜日

2013年1月27日の目次

■ 俳枕 江戸から東京へ(108)
       山尾かづひろ  読む

■ 尾鷲歳時記(105)
       内山 思考   読む

俳枕 江戸から東京へ(108)

山手線・日暮里(その7)芋坂下(羽二重団子③)
文:山尾かづひろ 

江戸から明治の羽二重団子










江戸璃(えどり): 子規が谷中に移り住んだ最初の家は番地的には下谷区上根岸88番地だったのね。2年後の明治27年には上根岸82番地に転居したのね。
都区次(とくじ): それにしても2年で転居したとは、どういうわけですか?

 我慢する価値などなくて寒土用 小熊秀子

江戸璃:上根岸88番地の家は8畳と4畳半と2畳と6畳に台所付きの家でね、子規が借りたのは8畳と4畳半の2室だったのよ。子規は金井姓の老婦人と居たのだけれど、老婦人の小むつかしさに辟易(へきえき)しちゃったようよ。それで2年目に陸羯南宅の東隣の82番地に借家が出来たのを幸いとして移転したのよ。これが子規庵というわけ。家賃が少々高かったけれど月給も上がっていたので断行したわけよ。
都区次:子規の就職関係の話は聞いていませんが?
江戸璃:次回以降追い追い話すわよ。
 

同店の彰義隊ゆかりの品













大寒や子規が抱へし肺空洞 長屋璃子(ながやるりこ)
大鴉嘴光らせ寒九の夜 山尾かづひろ 



尾鷲歳時記(105)

沖縄の知人たち
内山思考


無事と見ゆ甘蔗刈りおりと便り来て 思考

山田實写真集と
ヒロコさんに貰った沖縄の歳時記













3月いっぱいで妻が長年の役所勤めを退くので、4月、一週間ほど沖縄へ行くことになった。腎臓に慢性の病を抱えているので、極端な暑さや寒さが他人より苦手な妻は、以前から退職後は今帰仁(なきじん)あたりへ家を借りて、冬場はそこでのんびり暮らしたいと言っている。今回はその下見も兼ねての小旅行なのだ。泊まりは毎回、知人の紹介で国際通りのホテルを利用することにしている。

一緒に遊んで貰うメンバーもほぼ決まっていて、いつもメインの観光地以外の場所へ連れて行ってくれる。沖縄そばやチャンプルーも店によって味が違うから食べ比べも楽しみだ。前回(一昨年)巡り合ったそば屋は出汁があまりに旨くて、僕たち夫婦は出汁だけお代わりして丼一杯飲み干したぐらいだった。

いつも運転手をかって出てくれるタカシさんは、七十代とは思えぬファイトマンで、カラオケ店でビールジョッキ片手に渋い喉を聴かせた後、膝が悪いと言いながらボーリングを何ゲームか投げる人。タカシさんの幼なじみで滞在中の一切を仕切ってくれるヒロコさんは、トヨタ・カリーナを華麗なハンドルさばきで操る。この愛車、40年乗っていると言うから驚きだ。本土復帰前の車だからもちろん左ハンドルである。「よほどいい車運に恵まれたんだね」と言ったら、「運転手がいいからですよ」と返された。その通りに違いない。
守礼の門に立つ上江州さんと
40年代?の絵葉書

もう一人、上江州さんも僕たちを待ってくれている。元刑務官で、柔道で鍛えた身体は金太郎のイメージだ。みずから編集発刊する冊子「がじまる」には俳句仲間の作品以外に、おもろ、琉歌、民謡、短歌、詩、川柳などが盛り沢山だ。いつだったか、南風原(はえばる)陸軍壕跡へ案内して貰った時、上江州さんは「僕の身内はこのあたりで亡くなったと思う。だから骨の上を歩くようで・・・」と言った。僕はその言葉から次の一句を得たのである。

地を踏むは骨踏むことや沖縄忌  思考