2013年10月13日日曜日

2013年10月13日の目次

■ 俳枕 江戸から東京へ(145)
       山尾かづひろ  読む

■ 尾鷲歳時記(142)
       内山 思考    読む

俳枕 江戸から東京へ(145)

手線・日暮里(その45)
根岸(上根岸82番地の家(29)「子規庵」)
文:山尾かづひろ 

御所柿

都区次(とくじ): 子規の「柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺」の句では柿がモチーフとして利いているのですが、この柿は「御所柿(ごしょかき)」と呼ぶそうですが、わたしは現地へ行って食べてみたくなりました。

御所柿の少なくなりし奈良路かな 吉田ゆり

江戸璃(えどり):御所柿は奈良県のJR和歌山線の御所市(ごぜし)原産の甘柿で江戸時代には盛んに栽培され、極上の柿として幕府や宮中に献上されていたそうですが、現在までに他の柿に切り換えられて、ほとんど出回っていないそうよ。
都区次:どうしてですか?
江戸璃:栽培の難しさからきているそうよ。熟したときにヘタ隙や先割れが起こりやすく、富有柿(ふゆうがき)に切り換えられたそうよ。
都区次:ところで今日は日暮里からどこへ行きますか?
江戸璃:秋葉原駅で総武線に乗り換えて千駄ヶ谷駅から新宿御苑へ行って、帰りに新宿の大ガード近くで焼き鳥を食べてみない?

新宿御苑










木の実降る園遊会のありし園  長屋璃子(ながやるりこ)
秋夕焼高層ビルのシルエット  山尾かづひろ

尾鷲歳時記(142)



那覇の夜
内山思考

色のなき風も色ずく風車祝(カジマヤー)  思考

一面のクワンソウは沖縄伝統の島野菜
(今帰仁村で)

沖縄に来ている。今年になってから四度目だ。那覇市内にアパートを借りているので、飛行機の都合さえつけば滞在期間は自由である。今回の予定は一応7日間で、もちろん妻も一緒。10日の朝、7時に尾鷲を車で出て新名神を通って神戸空港へ到着したのが11時半(途中少し渋滞あり)、つまり三百キロ程を四時間半もかかったのに、神戸-沖縄間はたったの一時間半なのがいつも不思議で仕方がない。時速800キロ(だったかな?)でほぼ最短距離をすっ飛んで行くのだから当たり前なのだが。

僕は、大好きな離陸時の加速の快感を味わったあと、下界を眺めていたがその内に切れ目の無い雲の絨毯に飽きてしまった。でカバンからいつも持ち歩いている「鈴木六林男句集」のポケット本を取り出して読んでいたらいつの間にやら熟睡してしまったらしい。気がつけば、機体は軽く身震いするように那覇空港へ高度を下げはじめていた。

その夜は知人のS子さんとタカシさん、それに僕たち夫婦の4人が国際通りにあるバイキングレストランで夕食を共にした。それもいつものこと。僕は安くて美味しい沖縄の牛肉と豚肉を、焼いては食い食っては焼き、後の三人は明日からの予定を語りながらそれぞれのペースでゆっくり食べている。ここは沖縄でしか飲めない炭酸飲料「ルートビア」も飲み放題だから、何度となくおかわりをする。


タカシさんが特産品なきじんスイカを
買い込んだ

話しの様子ではだいたいのスケジュールは決まったみたいだ。僕はそれに従って運転手を勤めるだけ。それにしても豚肉が柔らかくて旨いこと。そして食事の最後はお約束のアイスクリーム「ブルーシール」である。味が濃い上にあまり冷たくないので、たくさん食べられるのが嬉しいのだ。それと沖縄ぜんざいが絶妙にマッチする。生ビールを呑んで上機嫌で話すタカシさんに相槌を打ちながら、僕たちの長い夜はなお続くのであった。明日は山原(やんばる)へ行くそうだ。今帰仁のよしこ食堂でふーチャンプルを食べよう。