2011年4月24日日曜日

私のジャズ (17)

ベティー・カーター Who? 
松澤 龍一
 Betty Carter (MK 1001)












すさまじいレコードである。ジャケットを飛び出しそうな大きな口の大きな顔の写真、タイトルも書いて無ければ、解説も書いていない。ジャケットの裏に伴奏のピアノトリオのメンバーの顔写真と曲目が載っているだけ。売る気を一切感じさせない、実に殺風景なレコードだ。それもそのはず、これはベティー・カーターと言う黒人の女性歌手が出した私家版のレコードなのである。

ベティー・カーターと言う歌手は全くの無名ではないが、それほど知られてはいない。レコードもレイ・ブライアントのピアノトリオの演奏の裏面にカップリングされたもの以外に数枚がある程度だろう。記憶が正しいとすれば、ソニー・ローリンズの初来日に同行して来ている。サラ・ボーンをさらにアクを強く、濃厚にしたダイナミックな唱法のため、好き嫌いが大きく分かれる歌手である。このレコードのスキャットはすごい。これには誰でもまいる。新宿にあったDIGと言うジャズ喫茶でこのレコードを最初に聴かされた時は、客全員の顔に驚嘆の色が走った。その後、渋谷のヤマハ楽器で数枚入荷するとの裏情報を得て、駆けつけ、買うことのできたレコードで、これは手放せない。

スキャットはサッチモことルイ・アールストロングが始めたとされている。あるスタジオ録音中のこと。歌っている途中で歌詞の書いてある楽譜を偶然落してしまったルイ・アームストロング、やおら、「デュバダバ、デュバダバ、ハッパフミフミ」と歌い出し、これがスキャットの始まりとまことしやかに伝えられている。どうも嘘ぽい。いや、絶対に嘘だと思う。

************************************************
追加掲載(120104)

バックのピアノはレイ・ブライアント? 映像は支離滅裂。