2011年5月8日日曜日

私のジャズ (19)

銭湯の富士山
松澤 龍一

 Surf Ride (Savoy MG 12089)












このジャケットを見ると、いつも銭湯の壁に描いてある富士山の絵を思い出してしまう。何とも稚拙な絵だ。凡そ、ジャズのレコード・ジャケットには洒落たものが多い。定評のあるのは Sonny Clark  の Cool Struttin' 。ジャケット一杯にタイトスカートから出た女性の脚が二本、ハイヒールを履き片方の脚がちょっと跳ねている。中のファンキーな曲に踊っているかのようだ。このジャケットだけでも買いたくなってしまう。

この稚拙なジャケットのレコードは白人アルト・サックス奏者のアート・ペッパーのもの。快作である。LPの両面にわたり、アート・ペッパーの気迫のこもった快演が聞かれる。白人のジャズ・プレーヤーは白人社会からは、当然、白い目でみられ、黒人社会からは白人のくせにと敵視されていたらしい。このような二重の差別の中でジャズをやっているのだから、肝が据わっている。根性ができている。黒人の名手を唸らせる演奏ができて、初めて認めさせることができる。アート・ペッパーしかり、ボサノバで名前を売ったスタン・ゲッツしかりである。スタン・ゲッツは一時。クール・ジャズの旗手のようにもてはやされたが、とんでもない。彼がディジー・ガレスビーやソニー・スティットと吹き込んだレコードを聴けばすぐに分かる。この黒人のテクニシャン二人を向こうに回し、燃えに燃えている。ホット、ホット、ベリーホットなスタン・ゲッツである。

この Surf Ride  と言うレコード、聴き直してみて新たな発見をした。ジャケットの裏に書いてある曲の順番が間違っている。B面の4曲目となっているジェローム・カーンの名曲 The Way You Look Tonight  が実はB面の2曲目である。この曲以外はすべてアート・ペッパーのオリジナルなので、分からないが、ジャケットに書かれている曲の順番はめちゃくちゃなようだ。中の演奏以外はどうもいい加減なレコードである。 

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追加掲載(120104)
黒人ぽい、骨ぽいアート・ペッパー