内山思考
少年に大手を広げ春の虹 思考
往年の名選手、 別当薫さんの父は尾鷲の人、 別当さんの本籍も尾鷲だった |
小学校に入学したばかりのある日の思い出。僕は運動場で高学年の野球チームの練習を見ていた。先生がしきりにノックを繰り返し、レギュラーがボールを追いかけている。元気一杯だ。 「リーリーリー」 僕の前、三塁線から少し離れたところにいる二人がヤケクソのように叫んでいる。彼らは新入部員らしかった。ふと絶叫コンビの片割れが、もう一人に尋ねた。「おい、リーリーってなんや?」 問われた子は驚いた風に一瞬横を向いたが、すぐ 「知らんけど、言わなアカンのや」と返し、二人はまた、「リーリーリー」と声を張り上げ始めたのだった。
大阪での学生時代の話。下宿の近くの駄菓子屋に入ると先客がいた。ステテコ、ダボシャツ、腹巻き姿のオッサンである。しかも丸刈り。幼児を抱いていなかったら、僕は多分、そのままUターンして帰っていたかも知れない。ナリに似合わず?子煩悩と見え、小さな指が差す菓子を幾つか買ってオッサンが出て行った後、店のオバチャンが僕に言った。「今の人、知ってはる?」「いえ…」 僕はかぶりを振った。「永淵はんやんか、ほら、近鉄の…、ホームラン仰山打たはる」「はあ」その時、僕は知らなかった。彼こそ、水島新司原作の人気マンガ「あぶさん」のモデルとなった酒仙スラッガー、近鉄バファローズの永淵洋三選手だったことを。
ヤンキースタジアムで 買って来て貰った 松井グッズ |