2012年4月29日日曜日

私のジャズ(69)


트로트
松澤 龍一
CDより












트로트、「トロット」と読むらしい。韓国の大衆歌謡のことで、日本では演歌にあたる。演歌と同じように、西洋音楽の七音階から、第四音と第七音を除いた五音階の音楽で、歌われる内容は朝鮮半島の独特な感情である「恨(ハン)」が多い。この「恨」という感情は日本の「恨み」とはどうも違うらしい。どちらにしても、マイナーな感情のようだが、現地の人から教えてもらっても、書かれたものを読んでも、どうもピンとこない。この辺りは外の人には永遠に踏み込めないところなのかも知れない。

李美子、リー・ミージャ(現地の発音ではイミジャと聞こえる)はトロットの国民的歌手である。日本では韓国の美空ひばりと呼び、韓国では美空ひばりを日本のイミジャと呼ぶ。上掲のCDを以前良く行っていた韓国で買って以来、私の大好きな歌手となった。このCDは外国人に買われることを全く予測していないため、全編ハングルで書かれ、唄われ、そのため何を唄っているのか皆目分からないが、聴いていると不思議と落ち着く。

古賀メロディーは韓国演歌の影響を受けていると言われていたことがあった。これは絶対に違うと思う。韓国演歌、トロットには古賀メロディーにあるような陰陰滅滅とした心の落ち込みが感じられない。哀しみの底に力強さがある、明るさがある。日本が朝鮮半島を支配した時移入された日本の演歌がトロットに影響し、「カスマプゲ」、「雨の湖南線」とか「木浦の涙」のような日本の演歌風の曲が作られたのではないかと思う。
李美子の小節(こぶし)が素晴らしい。この小節もトロットの大きな特徴である。

 
若い頃の名演。音質、画質、ともに悪いが、我慢しよう。