2013年4月7日日曜日

尾鷲歳時記(115)

季節のめぐみ
内山思考

片減りは下駄のやさしさ里桜  思考

自然農法の
デコポンなど













妻と一緒に桑名の姉のところに行ってきた。長年の役所勤めを終えた妻は、平日に自由行動をしている自分にまだ違和感を覚えるらしく、買い物に出掛けたスーパーセンターの休息椅子に歩き疲れて腰をかけ、ボンヤリと人の動きを眺めている。しかし彼女の身体の状態からすると、そういう生活が一番向いているわけだから、慣れてくるのを待つしかないだろう。

夫を一昨年なくし、室内犬と暮らしている姉は、僕たち夫婦が行くと大いに喜んでくれ、三人であちらこちらに出掛けるのが常である。今回も春嵐のあとだったのに、行く先々の桜は満開でとても楽しかった。二泊して三日目の夕方帰宅。子供たちはまだ帰ってなくて、台所のテーブルの上に三日分の新聞と郵便物と紙袋が乗っている。

新聞の自分のコラムをまず確認してから郵便物に目を移すと、花谷清さんより「俳壇」四月号が届いていた。掲載されたエッセイを読んで清さんが過去にお姉さんと妹さんを相次いで亡くされていることを知り、いつもどこか寂しそうな表情を浮かべていらっしゃるのは、そんなところにも理由があるのかと思った。でも時折見せるはにかんだ笑顔が印象的な人である。

滴りの光や誰のものでもなく 清 

僕の句集
青木印刷からの封筒もあった。実は僕は第三句集の刊行を予定していて、見積もりをお願いしていた。その返事である。内容に満足したので後ほどメールすることに。ちなみに、第一句集「山の重さ」は平成八年、第二句集「水桶の龍」は平成十三年だからずいぶん間が空いたことになる。受け渡しは六月下旬とのことだ。

そして紙袋の中身は沢山のデコポンと虎杖とタケノコ。灰汁取りの糠もちゃんと添えられていて、これは多分、娘の弥生が、農業をしている知人から貰ったものだろう。一つ食べようとデコポンを剥きかけて、姉が「デコポンて高いのよ、一個450円もするの」と言っていたのを思い出し、姉に送ってあげることにした。