2014年9月7日日曜日

俳枕 江戸から東京へ(192)

谷中(その1)
文:山尾かづひろ 


大雄寺本堂









都区次(とくじ): 前回は麻布の南部坂でしたが、今日はどこですか?

日盛りの物音もなし谷中路地  畑中あや子

江戸璃(えどり):ちょっと飛ぶけれど谷中にいくわよ。
都区次(とくじ):また、どうして?
江戸璃:大矢白星師は第二次大戦中に日暮里駅から開成中学に通学されていてね、谷中は懐かしい場所らしいのね。東京が8月のお盆休みに入って空いてきたでしょう。谷中を歩こうという気分になられたので、私も案内してもらってね。今回はそのコースをトレースしようというわけ。
江戸璃:まずは日暮里駅から日蓮宗の大雄寺へ行くわよ。大雄寺の山号は長昌山でね、日達聖人(元和8年1622年寂)が開基となり、慶長9年(1604)神田土手下に創建されて、万冶元年(1658)当地へ移転してきたのよ。本堂の前の楠(くすのき)の大樹の下には、幕末の三舟の一人、幕臣で槍術に秀で、徳川最後の将軍慶喜公を警固したことで知られる高橋泥舟の墓があるわよ。三舟のあと二人は勝海舟と山岡鉄舟なのよ。
都区次:夕方になりましたが、どうしますか?
江戸璃:日暮里駅から帰るけれど、隣のせんべい屋さんの「嵯峨の家」で手焼きせんべいを買って帰るから付き合ってよ。

高橋泥舟の墓














三舟の一人眠れり秋簾   長屋璃子
黙々と煎餅焼きし秋の風  山尾かづひろ