2014年12月7日日曜日

尾鷲歳時記(202)

柚子と日向ぼこ
内山思考 

ダムの背に水圧静かなる師走  思考 

柚子いっぱい








来年結婚する息子が市内に家を借りた。彼は仕事で日中いないので、電気や水道の工事をする人が来る時だけ、鍵を開けがてら恵子と留守番をするようになった。そこは南向きの二階屋で、前に遮るものがなくとても日当たりがいい。しかも車道に遠くて静かな環境だ。尾鷲市の北、天狗倉山(てんぐらさん)の麓にある内山家の場合は、前方の小さな寺山に陽が早く入るので、冬場のんびりとお天道さんを愛でることは出来ない。その代わり台風の雨や風が強く当たらない利点もあるのだが・・・・・。

寒さに弱い僕たちは、庭に面した大きな窓の内側で、トドかアザラシのように寝そべって工事屋さんの仕事の音を聞いているのが仕事。「ぬくとい(暖かい)なあ、お父さん」と恵子。「そうやなあ」と相づちを打ちながら僕はケータイを使ってのいつもの原稿打ち。「帰りにユズ貰(もろ)てこかお父さん」「うん」。庭の隅に低いユズの木があり黄色い実がいっぱいなっているのである。やがて、終わりましたと作業服のお兄さんが去り、僕たちも帰宅することにした。恵子はユズを三個もいでポケットに入れた。

帰ってからの僕の仕事は年賀状書きである。実は今年は一枚だけ仕上げて、それを百枚プリントしようと考えたのだが、業者に問い合わせたところ結構な出費になることがわかった。それならやっぱり全部手書きにしようと思い直して、来年の干支のヒツジを一匹づつ描く決心をしたのである。

これでヒツジ30匹
思えば昨年末も今年のウマを鼻息も荒く百頭仕上げたものだ。一筆書きのような単純な線で、一匹一匹描いていると、途中でヒツジというよりブタに似ている気がし始めたがめげずに、やっと百匹目を完成。あとは宛名書きを残すばかりにして、次は御飯を炊く用意にかかった。おかずは青木家から連絡が入り次第差し入れの豚汁を頂戴にうかがう手筈になっている。誠に有り難いことで、あとは娘の弥生が帰ってから何か作ってくれる筈の師走某日である。