2014年12月14日日曜日

尾鷲歳時記(203)

年用意
内山思考 

女湯も妻だけらしき冬の山   思考

とりあえずもってゆく二冊









二十日過ぎの航空券を予約して、今年も内山夫婦は沖縄にて寒さをやり過ごすことになった。免疫抑制剤の副作用で体調がもう一つすぐれない恵子も、あちらにいれば尾鷲のように暖房のきいた部屋の中で冬眠しなくて済むと考えやっと決心したようだ。昨夜、滞在中にいつも行動を共にしてくれるタカシさんから電話があり、「空港まで迎えに行くから前の日に連絡して。奥さん元気?えっ尾鷲寒いの?こっちも寒いよ、僕半袖だけど」と言ったのを気に入ったらしく、恵子はしばらく笑っていた。

彼女は名古屋の担当医を通じて、那覇市の病院を紹介して貰い、帰鷲するまでそこに通院することになる。着る物や何かは間際に揃えればいいだろう。昨年は沖縄の気候がまるでわからず、タカシさんヒロコさんに聞くと、長袖に一枚羽織るぐらいとのこと。

しかし、毎日寒い寒いと過ごしている身にはどうにも感覚が掴めず、まあ行ったら何とかなるやろ、と那覇空港に降りたら、ちょうど沖縄には珍しい寒波とかで「暖かいけど寒い」不思議な感覚を味わったのだった。結局、沖縄の冬は曇って風があれば肌寒く、太陽が出れば暑いということを知ったのである。

年賀状も書いた、「風来」の原稿も仕上げた、後は10月の柿衞文庫での講演内容の文章化を残すのみである。誰かが師走は気忙しくて読書には向かない月だと言っていたが、まさに同感。従って年が変わってからゆっくり読もうと面白そうな本を集めているところである。「沖縄本」の現地調達も大いに楽しみだ。

「今年の1月6日、沖縄玉泉洞で
それから尾鷲にいると、よほど集中する時以外はラジカセを鳴らしているのだが、沖縄は大気がそのまま音楽のような気がして、何も聴こうと思わない。となりの雑貨屋のおじさんおばさんの声も懐メロのようだ。今の僕は、あの日当たりのいい那覇のアパートの三階で、街の向こうから上がる初日の出を見るために、ボチボチと何や彼やと年用意を始めているところである。