2015年1月11日日曜日

尾鷲歳時記(207)

ウチナー(沖縄)散歩
内山思考 

風神の眠らざる街寒に入る   思考

中央の白い建物が
那覇の我が家














沖縄住まいを始めて二十日ほどになった。年末年始は人混みを避けてあまり出歩かなかったので、僕と恵子の正月は、まるで他郷のお祭りみたいに通り過ぎて行った。まだ年賀状を見てないから余計そう思うのかも知れない。2~3日前に子供から、郵送したとメールがあったのではるばる海を越えて、今日あたり届くはずだ。それを手にしてやっと、二人の2015年がスタートするような気がする。

その内山夫婦がどんな毎日を送っているかと言うと、タカシさんやヒロコさんと特別な約束がない限り、恵子はアパートにいることが多い、身体の痛みに波があるのである。で僕はと言うと、書いたり読んだり、掃除洗濯以外は、買い物がてらの散歩が日課となっている。アパートから二百メートルほど坂を下ってすぐ右手に大型マーケットがあるのだが、時には下った勢いで、つい左に曲がってしまうと、そのまま加速がついて那覇の中心部(南)へ歩き始めてしまうことがある。こうなるとまるで風来坊で、行き当たりばったりの路地巡り。

沖縄は民家もビルも店舗も看板もオリジナリティに富んでいて、どの角を曲がっても僕には飽きるということが無いのである。暦では寒に入ったのに、こちらは太陽が出ると暑くて、公園のガジュマルの蔭で涼んだりもする。そうして思うさま散策を楽しんで、さあ帰ろうかと当たりを見回して「ところでここは?」と鳩みたいに目をパチクリさせる思考。そんな時に取り出すのが、和田悟朗仕込みの旅の必携品、小さな磁石である。

大好きな漫画
「がじゅまるファミリー」
蛍光塗料のついた針先が「えーと、ちょっと待ってね」とでも言うようにしばらく揺れてから「こっち」とN(北)を指すと一安心。方角がわかれば歩いている内に、標識が見慣れた町名を示してくれるというわけだ。買物袋をぶら下げてアパートに帰って、万歩計を確認するのも楽しみの一つ。ところで安謝はとても風の強い街だ。夜通し虎落笛が鳴っている。