2015年5月31日日曜日

尾鷲歳時記(227)

みちのくや
内山思考 

みちのくや夏山にして雪残す 思考 


この大きさ












生まれて初めての東北行をしている。最初三泊四日で青森岩手を巡る予定のはずが、名古屋までの高速道が工事期間で連日渋滞、飛行機に乗り遅れると困るという判断でホテル一泊を追加して、4人(内山、青木夫婦)の乗る飛行機は、定刻通り(午前十時半)夏日の名古屋上空に浮かんだ。

空路と言えば最近は沖縄行が多く、北へ飛んでいるのが何だか不思議だ。でも珍しく一番前の座席なので翼が視界を遮らず視野が良好。空の青も静かに移動する地表も美しい。「思考さん、思考さん」後ろの席の青木上人が前方を指した。噴煙が見える。御嶽山だった。ああここか・・・と思う。

機はそのまま北上し海へ出ると列島と平行に穏やかな飛行を続け正午前に青森空港に着いた。予約のレンタカーに乗り換えてまず向かったのは三内丸山遺跡である。思考運転の尾鷲組はナビ任せで津軽平野を走る走る。車内は喋る喋る。近景の街並み、まだ雪を残す遠景の岩木山、全て
が新鮮なのである。とにかく広いと思った。

目の前に天狗倉山を仰ぐ尾鷲と違って、ここでは山は遥かに見渡すものなのだ。雪の季節にはこの世界が真っ白に変わるのか、想像がつかないねと話し合う。平日とあって目的地は人影もまばらでなお空間が有り余っている感じがした。出土品の中の穴あき翡翠の薄緑に心奪われる。その他にも土器あり石器あり四、五千年前の縄文人の技術力の高さに舌を巻いた。
八甲田にはまだ雪が

そして住居跡の間に聳えるのはここのシンボルでもある三段の櫓。もし本当にこの通りの建造物だったら重機の無い時代、どうやって巨木を組み上げたのだろう。一同感嘆の中、広大な敷地内に伸びた草をゴーカートに似た草刈り機でオジサンたちが軽快に刈って行く、ちょっと乗ってみたくなった。美術館、棟方志功記念館と回って青森の夜はタクシーで食事へ。ここではみちのくの未知を喰い、さあ明日は八甲田ロープウェイに吊られ揺られ、奥入瀬渓流を辿っての岩手入りが待っている。