2015年8月23日日曜日

尾鷲歳時記(239)

晩夏の戯れ言 
内山思考

光速のあと音速の遠花火   思考

暑い時こそきつねうどん













とにかく日々の暑さばかり嘆いていたら、お盆を過ぎた途端に人間で言うなら人が変わったみたいに曇りがちの天気が続くようになった。キョトンとかケロッとかの擬音が似合う空の表情の変わりようだ。そうなればなったで、輝く青空と屹立する入道雲が妙に懐かしかったりするから勝手な話である。夏の神様が「もうワシもたまらんわ」とでも思ったのだろうか。「秋よ早く代わってくれよ」と。とかくこの季節は風神雷神にも方々からお呼びがかかって応対にてんてこ舞い、「ああ忙しい」「ああ忙しい」と飛び回っているところを想像して、それを題材にしたら昔話が一つ出来そうだと考えたりもする。

しかし朝晩めっきり(この形容も面白い)涼しくなった・・・わけではまだない。昨日、蕪村と若冲の特別展を観るために滋賀県信楽(しがらき)町のミホ・ミュージアムまで足を伸ばしたが、そこもまだまだ漂う気配は初秋というより晩夏の匂いの方を強く感じた。例の大小さまざまの陶器の狸たちも、大福帳やら何やらをぶら下げ大義そうに口を開けて街道のそこここに並んでいたっけ。

「盆の挨拶」 一年をループ状に考えると六月で折り返して、八月はグンと加速するところだ。これからは月日が早く流れる(ような気がする)。お盆はそこいらの知り人が帰省してくるので、顔を合わせると久闊の挨拶を交わす。しかし、正月のように「明けましておめでとう」といった形式だった挨拶はない。

クールなハーブ
虎の尾
「こんにちは」「久しぶり」「大きくなったね」などは年中使えるから、盆専用の挨拶を考えてみた。ただし冗談。まずお墓参りなどお盆の約束事を行ったあとは互いに、「せし盆(セシボン)」と言う。いつまで休みなのと聞くときは、「盆中居るの(ボンジョールノ)?」 お坊さんは来ましたか、は 「梵僧は(ボンソワール)?」といった具合だ。フランス語に似ているのは仕方が無い。仏語には違いないのだから。