松澤 龍一
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Introducing Paul Bley (Debut QJCCD-201-2) |
昔、ジャズの好きな仲間とブラインドホールドテストと言うものを良くやった。レコードをかけてその演奏者を当てさせるものである。演奏者全員を当てさせるより、ある特定の楽器の奏者を当てさせることが多かった。例えば、ピアノトリオのレコードをかけて、ベースは誰々、ドラムスは誰々と教えておいて、さてピアノは誰でしょう、と言うものである。中々当たらない。もっともすぐに当てられるようでは面白くない。誰も知らないプレヤーでは、これまた面白くない。そこそこ名前が知られていて、へえー、あの人がこんなメンバーと、とか、こんな演奏をとかの驚きが生まれるのが良いブラインドホールドテストだ。出題もなかなか難しい。
このCDなどブラインドホールドテストにはうってつけだと思う。ポール・ブレイの初リーダーアルバムで、サイドメンが凄い。ベースがチャーリー・ミンガスで、ドラムスがアート・ブレーキー、1953年の録音である。ベースがチャーリー・ミンガス、ドラムスがアート・ブレーキーベース、さてピアノはと言うと、多くの人がセロニアス・モンクを思い浮かべるかも知れない。セロニアス・モンクにも確か同じようなメンバーでの録音があったはず。(記憶違いかも知れないが) そう思って聴くと、このポール・ブレイの演奏はバッド・パウエルのセロニアス・モンク割りである。ところどころに聴かれる長いメロディーラインはレ二ー・トリスターノも思わせる。名前が売れ出したのは60年代に入り、いわゆるアヴァンギャルドのピアニストとしてであるから、あのポール・ブレイがこんな古風な演奏をしていたのかと驚かれること請け合いだ。
アヴァンギャルド時代のポール・ブレイはあまり聴いていない。聴いていたにしても、強く印象には残っていないが、セシル・テーラーのようにガッツン、ガッツンやる人では無かったように思える。硬質なリリシズム、これが彼を表す最適な言葉かも知れない。甘ったるいビル・エバンスよりは好きだ。
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追加掲載(120104)
モンクぽいがモンクじゃないし、う~ん。