2011年9月4日日曜日

私のジャズ (35)

ソ連のジャズ
松澤 龍一

ANTHOLOGY OF SOVIET JAZZ
(MOHO M60 46471 007)












「私のジャズ」の愛読者の方から貴重な資料をお借りした。ANTHOLOGY OF SOVIET JAZZ と題されたLPレコードである。この方は大学でロシア文学を専攻され、ご主人のお仕事の関係でペレストロイカ時代のモスクワに滞在されていた。

ジャケットはロシア語で書かれているため内容は良く分からないが、録音された年をみてびっくり。1937-40年である。ボルシェヴィキによる10月革命が1917年、レーニンの死去、トロツキーの追放が1924年で、スターリンの独裁体制が固まりつつある時代、ちょうど「大粛清」が起きている頃である。ロシア革命からたかだか10数年、その混乱も収まらない時に、こんなジャズがソ連で受けていた。



当時、本家のアメリカで流行っていたダンス系のスウィングバンドだが、随所にロシア民謡系の味付けが光る。曲はオリジナルが多いが、Solitude  や Blue Moon などのスタンダードも演奏している。ロシア語で唄う Blue Moon も中々なもの。
ロシアと言えば、スタンダードポップの作曲家、本名はロシア語表記で  Израиль Исидор Бейлин、英語表記で Israel Isidore Baline が有名だ。アメリカにわたりアーヴィング・バーリンとアングロサクソン風の名に変え、多くのヒット曲を作った。「ホワイト・クリスマス」がヒット曲のひとつ。