松澤 龍一
THE HARD BOP (BLUE NOTE TOCJ-6035) |
ハード・バップ、50年代に流行ったモダン・ジャズの総称である。どうも、和製の英語らしい。40年代パーカーやガレスビーがやっていたモダン・ジャズの原形であるビバップから発展したもので、演奏も器楽的なものから、黒人ぽさを加味したよりメロディアスなものへ変わり、LP盤の普及により演奏時間も長くなった。
この時代に、日本で、モダン・ジャズが一大開花期を迎える。雨後の筍のようにあちこちにジャズ喫茶が生まれる。当時、ハード・バップの一大レーベルはBLUE NOTEであったが、日本では高価な輸入盤でしか手に入らなかった。個人が買うには高過ぎた。そのため聴きたい人はジャズ喫茶で煮しめたコーヒーとタバコの煙に燻されて聴くしかなかった。このCDはその当時、BLUE NOTEに録音された色々な演奏を集めたオムニバス盤である。タイトルもズバリ THEHARD BOP!
ハード・バップの誕生を告げる名盤中の名盤である。マイルスのトランペットが何ともファンキーで良い。後に続くミルト・ジャックソンのバイブも力強い。マイルスのソロの時、ピアノのセロニアス・モンクがバッキングアップをしていないから、二人は不仲だったと噂が立った。絶対に違うと思う。パーシー・ヒースのベースとケニー・クラークのドラムだけで演ずるマイルス、ここにピアノの音は不要だ、とモンクが思ったに違いない。あるいは、マイルスに聴き惚れていたのかも。