2012年3月18日日曜日

私のジャズ(63)

とんだ失敗
松澤 龍一

中国製レコード・プレーヤー








ネットで初めて買い物をした。レコード・プレーヤーが壊れてしまい(実際には針が摩耗して、音がガリガリ言いだしたので)、新しく買おうとネットで捜したのである。一番安いものを注文。それでも大枚6千円近くの投資であった。すぐに、でかでかと MADE IN CHINA と印刷された段ボール箱が到着。早速、梱包を解く。アンプに繋げようと、プレーヤーから出ているはずのリード線を探すが見つからない。いくら探しても見つからず、プレーヤーより出ている線は電源コードのみ。プレーヤーの両脇にある銀色の楕円形のものがスピーカーと判明。これで分かった。これは、オーディオ・システムの一部としてアンプに繋げて使うものでは無く、それ自体でアンプ、スピーカーを内蔵した一体型のプレーヤーだったのだ。最初にレコードを聴いたのは確かこのようなものだった。最初のレコードは忘れもしないリッキー・ネルソンの「トラベリング・マン」、B面は「ハロー・メリー・ルー」のドーナッツ盤だった。

プレーヤーが来たら聴こうと思っていたレコードがあった。それは、ジョン・コルトレーンがジョニー・ハートマンと言う男性歌手と共演した有名なレコードである。ジョニー・ハートマンのふくよかなバリトンの声にコルトレーンのテナー・サックスの清澄な高音が絡み、とても良いムードを出しているものだ。この中国製一体型プレーヤ―にかけてみたが、案の定、駄目だった。ジョニー・ハートマンのビロード・ボイスと言われた美声が瘠せている。コルトレーンもやけにキンキンした金属音に聞こえる。さらにベースが全然聞こえない。本来であれば我が家のシステムの BOSE のスピーカーから流れて来るはずだったのに、残念と、後悔しきり。


ジョニー・ハートマンは現物を聴いているはず。中学生の頃か、大分昔のことで定かでないが、確かアート・ブレーキーと一緒に来日をして、その時に産経ホールで聴いた記憶がかすかにある。全然、印象には残っていない。もっとも、こんな渋い歌手を中学生が分かるはずがないが。