2012年7月8日日曜日

尾鷲歳時記(76)

七夕の約束
内山思考

何かしら違う茅の輪の内と外 思考

蓮田(大賀ハス)に立つ
青木上人・田辺市にて









青木健斉上人と和歌山県田辺市へ一泊の小旅行に出掛けた。 目的の一つはコカリナ奏者・黒坂黒太郎さんのコンサートだ。春先に、黒坂さんの妻でボーカリストの周美さんから案内をいただいたが、尾鷲からだと紀伊半島を西へ三時間ほど横断せねばならず、おまけに夕方の開演なのでちょっと無理かな、とあきらめていたら、上人が「行きませんか」と誘って下さったのである。

上人は田辺のご出身だ。こういう場合、地理や文化に詳しい人と一緒だと観光目線で行動しないから、無駄がなく掘り出し物の邂逅が期待出来る。僕は二つ返事でOKし上人と同じホテルを予約した。で6月末日の午後出発、上人の運転する車は国道42線を南下、熊野市から山へ入り熊野川へ出た。途中、ナビゲーションの音声が三重県、奈良県、和歌山県の侵入と通過を小刻みに告げる。

上人と語るのは楽しい。もう三十年来のお付き合いで、話題も葛(つづら)折りの山路の如く右に左に自在の変化を見せ、車はいつの間にか田辺市内を走っていた。ホテルにチェックインした後、コンサート会場へ向かうともう沢山の人だかりである。座って開演を待っていると「こんにちは」と声をかけられ、振り向くと何と行き付けのライブ喫茶「フォークス」のマスター夫婦が笑っているではないか。尾鷲ほどではないけれど店のある三重県紀宝町も結構遠い。「7月7日よろしく」と言われ「こちらこそ」と答える。実はその日新曲ライブがあって僕も出演者の一人なのだ。

尾鷲の七夕が
こんな快晴なのは珍事

コンサートは盛会だった。舞台の周美さんはいつものように明るく、いつものように美しい声で歌った。特に東日本大震災で被災した陸前高田の一本松を訪れた話の後のスタンダード曲「一本の樹」には感動。青木上人も、この春、その地の供養塔の建立に立ち会った縁があるので感無量のご様子であった。さて夕食はどこで食べましょう?と夜の街へ出掛ける僧形二人…。ふと気になることがあり妻に電話する。「自治会のカラオケ大会いつやった?」「7月7日」「あちゃー!」 見事なダブルブッキングだった。