2012年9月2日日曜日

私のジャズ(87)

もう一人のグリーン
松澤 龍一













前回はモダン派のギター奏者、グラント・グリーンを取り上げたが、もう一人のグリーンと言う名のギター奏者もジャズ史上では忘れてはならない人である。その名はフレデイー・グリーン、カウント・ベイシー楽団で長年にわたり軽快なリズムを刻み続けてきた。

彼はほとんどソロを取らず、もっぱらリズムギターに徹してきた人として有名である。なおかつ電気で増幅するギターを使用せず、アコースチックギターを使用してきた。アコースティックのため当然音量は小さく、ビッグバンドの管楽器には対抗できず、ほとんど聞こえないのが実際のところである。でも、フレディー・グリーンが後ろで弾いていると、カウント・ベイシー楽団の乗りが違うとまで言われてきた。

管楽器の咆哮が一瞬途切れ、カウント・ベイシーの単純なピアノソロ、それに絡むフレディー・グリーンのリズムギター、なんとも粋で良い。ジャズ的感興が高まる一瞬である。このようなギター奏者は今後出てこないであろう。また、彼のいたカウント・ベイシー楽団も過去の遺物になりつつある。

でも、こうして音源として残されていることに、その時のジャズのエッセンスに触れられることに感激する。近代技術の進歩の賜物である。近代技術の進歩は弊害ももたらすが、中々良いこともする。


http://www.youtube.com/watch?v=741zrJSbw1g