2013年4月21日日曜日

尾鷲歳時記(117)

サンゴの海の思考
内山思考

お先にどうぞと忘れ潮のなまこ  思考 

人影もほとんど無く
まるでプライベートビーチ









沖縄に到着してみると四月とは思えないほどの肌寒さで、初夏の装いの思考夫婦は少し戸惑った。空港まで迎えに来てくれたヒロコさんによると、清明祭という墓前祭のあるこの頃、急に冷え込むことは珍しくないが、今年は特別なのだとか。

翌日は、旧知のタカシさんが今帰仁(なきじん)へ磯遊びに誘ってくれた。ちょうど大潮なのだそうだ。いちばんよく引くのが二時とのことで、少し早めにタカシさんの車で那覇のホテルを出発し高速を北上。同行の助手席のヒロコさんと四人で賑やかに話しながら、僕は二年ぶりと思えないほどの自然な雰囲気を心地よく感じていた。

今帰仁に入るとまずヒロコさんの友人ヨシコさんが営む食堂へ向かった。目的は腹ごしらえと、地元の海をよく知るヨシミさんとの待ち合わせである。店に着くとヨシミさんがすでに待っていてくれた。体の大きな人である。タカシさんとは長年の付き合いらしく土地訛りの冗談が早速飛び交って僕たちは大笑いだ。

昼食メニューは野菜や麩入りのチャンプルー定食。「おかわりどうですか?」とヨシコさんが勧めてくれたが、僕は妻とタカシさんのお裾分けを既に頂戴していたので辞退した。

店をあとにした一行はヨシミさんの軽トラックの先導で畑や森を抜けてやっと浜辺へ。車を降りて妻と二人思わず「ワア」と声をあげてしまった。何という絶景だろう。潮が引いて一つの湾が見渡す限りの浅瀬になっている。貝採り用の籠を手にしてサンゴの絨毯を歩き出すといよいよ趣きはヒートアップした。

サザエもこんなに
(ほとんどヨシミさんの収穫)
見たこともないヒトデ、ナマコ、それにとりどりの貝類は土産物としてしか知らないものばかり、それらがみな生きているのである。あたたかい潮溜まりをライトブルーの小魚が泳いでいるのも驚き。とにかく360度の空間全てが新鮮で夢の中にいるようだ。ふと我に返ってあたりを見回すと、遙か向こうに妻の赤いジャケットが小さく見えた。