2014年10月26日日曜日

尾鷲歳時記(196)

新刊が届いて 
内山思考 

ゆるやかに垂れゆく時間林檎むく   思考

カバーデザインが
楽しい新刊













ヤマネ博士の湊秋作先生から新しい著書が届いた。経団連出版の「企業が伝える生物多様性の恵み」がそれだ。(環境教育の実践と可能性)の副題がついていて、湊先生と、自然保護、環境教育の2人の専門家による共著である。タイトルが示すように内容は、学校や企業向けの「環境教育手引き書」ということらしい。実は今までの湊先生の著書は、子供でも親しめるイラストいっぱいの本が多かったので、今回もそんなイメージを抱いていた僕には正直意外だった。

咳払いをして真顔で恐る恐る読み始める(ちょっとオーバーか)「実践編」「企業編」は一流企業の自然に対するさまざまな取り組みや、その進め方が記されていて、「営利事業」イコール「自然破壊」はわれわれの一方的な偏見なのかと思う。「基礎編」を読んで湊先生の筆だなと気づいた。一言づつゆっくり語って聞かせるような明快な文章、その間に「海は森の恋人」「自然は子供の先生」など印象深いキャッチフレーズが登場する。

これだこれだ。僕が昨年の正月、四十何年ぶりの高校同窓会で彼に興味を持ったのも、会場のほとんどが久闊を癒やす方に気を取られて賑わう中、ヤマネのスライドを説明する姿に人柄がにじみ出ていたからだ。「きっとこの人は充実した人生を送っている」その感覚が間違いでないことを、後に送ってもらった数冊の著書で確信した。まさに「文は体をあらわす」わけで、僕の知るところでは和田悟朗さんもその典型である。和田さんの著した化学の専門書など、あの和田さんが書いていると思うだけで、実際に講義を受けている気持ちになってくるから不思議である。

僕と湊くん中学も一緒、
那智中卒業アルバム
じゃあ専門的な内容が全て理解出来るのか、と問われれば「否」と言うしか無いが、それはこちらの素材がお粗末なだけのことでさほど問題ではない。難解な部分があったにしても何かの折にふと手に取りたくなる「メンタル・ハーブ」とも言うべき一冊、今回それが新たに座右に加えられたのは嬉しいことである。