2014年11月16日日曜日

尾鷲歳時記(199)

冬が来て 
内山思考 

冬座敷横切る電気コードかな 思考

妙長寺の薪ストーブ










岩手の藤沢さんから雪便り(メール)が届いた。急に「もっさ、もっさ」と降り出したので、自家用車は冬用タイヤを履いていず、急きょ台車(代車?)で外出した「父ちゃん」が心配だとあった。立冬が過ぎても、尾鷲と名古屋を行き来している僕のまわりにはまだ秋の名残がたっぷり残っていて、北国へいきなりやってきたという冬将軍のイメージが掴めない。メールには(青木)健斉さんと思考さんに吹雪いて前方が見えない状態での走行を体験して貰いたいとあった。新しい除雪車(機)を購入した、とも。

前が見えない程の豪雨なら日本有数の多雨地である尾鷲人はなれているけれど、雪には馴染みが薄いから自家用除雪車がいくらぐらいするものか見当もつかない。藤沢さんたちは来年の雪解けまで一体どんな日常を過ごすのだろう。しかし、いくら東紀州が温暖だといっても冬であることには変わりなく、それどころか、なまじ日中が好天気だったりすると、中途半端な寒さを味わうことになる。灯油ストーブをつけたり消したり、厚着したり一枚脱いだりといった具合で、特に僕などは暑がりの寒がりだから、加減がややこしい。

一言で表現すると、このあたりの冬は「薄ら寒い」冬なのである。先日、句会用の三色ボールペンを買いにホームセンターに行ったら青木夫妻に出会った。薪ストーブが傷んだので買い換えを考えているとのこと。見ればこの地方ではあまり馴染みのない薪ストーブが三点展示されている。妙長寺の玄関の三和土には小さな薪ストーブがあって、訪れた客はホカホカとした温もりを感じながら応対を受けるのである。

わが家は湯たんぽ派
暖を取るとよく言うが、電気、湯、ガス、灯油それぞれの持ち味がある中で、やっぱり「赤い炎」の暖かさが一番人間を癒やしてくれる。チロチロと燃える炎は体の奥に眠っている原始の記憶を蘇らせてくれるようである。これから本番を迎える尾鷲の冬、青木家を訪れる客をどんな薪ストーブが迎えてくれるのだろう。