レイ・ブラウンはやはりすごい
松澤 龍一
ピアノトリオはベースで決まる。このアルバムを聴いてつくづく思う。このアルバムとは、ジュニア・マンスが遺した数少ないアルバムの一つ「JUNIOR」(Verve V6-8319)のこと。ベースが、レイ・ブラウンである。レイ・ブラウンはやはりすごい。なんと言っても、あの音、ふくよかで深みのある音、ウッドベースの真髄、ここにありである。このアルバムはリーダーのジュニア・マンスより伴奏のレイ・ブラウンを聴くべきものだと言えよう。最初の曲「A Smooth One」でテーマの提示が終わり、アドリブに入るところで絡んでくるベース、この間がまたなんとも言えない。こんなスリリングな箇所が随所にある。ピアノのソロがベースを伴奏しているかのように聞こえてしまうから不思議だ。1959年のニューヨーク録音とあるから、モダンジャズ、いわゆるハードバップ全盛の頃の作品、リーダーのジュニア・マンスは同時代のボビー・ティモンズとかウィントン・ケリーなどと比べると影が薄いが、実に小粋な演奏を聞かせてくれている。ジャケットはジュニア・マンスが赤いセーターで一人ぽつんと写っている写真、これもまた粋である。
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追加掲載(120104)
長く音楽活動を共にしていたオスカー・ピーターソンのトリオでの演奏で、レイ・ブラウンの妙技が聴ける。