2011年7月17日日曜日

尾鷲歳時記(26)

海の幸・川の幸
内山思考 

 打水や路地のおちこち人滲み  思考

たまり漬け、生節、塩辛と二合飯












鰹の大漁がよく地元紙に掲載される。 この季節、新鮮な刺身を食べたければ、僕たちはいつでもその望みを叶えることができる。 住んでいる北浦は元々、漁師町なので、ご近所からのお裾分けに預かることもあるし、市内のマーケット、路地の魚屋さんなど、入手の方法は色々とある。 「はいよ」と一本丸ごと玄関先に届くこともあり、そんなときは、魚屋さんをしている従姉のところへ提げていき、捌いてもらう。

妻も漁師の娘なので、出来ないことはないのだが、仕事から帰って家庭用の狭い台所で包丁を振り回すのは億劫のようだから、僕が従姉に頼むのだ。 彼女は凄い。左利きなので、見ている方は何だか危なっかしく思うが、冗談を言いつつ鰓から刃を入れて頭を落とし、三枚に下ろして皮を剥き、あれよあれよと言う間に皿へ盛り付けてくれる。流石にプロ、動きに無駄がない。

片身はブツ切りにしてもらって醤油漬けにする。これは「たまり漬け」といい、味が染みた頃に焼いて食べるのだ。 生姜醤油に浸した刺身を汁椀に入れ、熱い番茶を注ぐと旨味たっぷりの「茶じふ」になる。よくダシのでる鰹ならではの楽しみ方で別名「医者ごろし」つまり、病気も寄り付かない滋養食というのもうなづける。 我が家はタタキにする習慣はない。

あと、鰹で好きなのは「生節(なまぶし)」である。これはいわゆる「なまりぶし」でなく、それをウバメガシで燻した薫製である。包丁で削いでそのまま生姜醤油が最高。 玄人好みの内臓の「塩辛」も外せない。やや生臭みがあるので、好き嫌いは分かれるが、茶漬けにして啜りこんだ時の幸福感を嗚呼、何に例えればいいのだろう。
釣りたて焼きたての鮎









鰹のことばかり書くつもりでいたら、妻の幼なじみが釣りたての鮎を持って来てくれた。 夏風邪で寝込んでいる妻にそれを告げると「あ、塩焼き食べたい」と言った。