2011年7月3日日曜日

私のジャズ(27)

エラはしっとりと
松澤 龍一
Songs in a Mellow Mood
  (MCA RECORDS MCA-3022)













古今東西、ジャズヴォーカルの名盤を10枚挙げろと言われれば、これは、確実にその内の1枚に入るレコードであろう。いや、5枚でも入るかも知れない。ことによると、たった1枚にも。エラ・フィッツジェラルドがエリス・ラ―キンスのピアノの伴奏だけで唄った Songs in a Mellow Mood  と名付けられたアルバムのことである。

片面6曲づつ、合計12曲のスタンダードを、ピアノの伴奏だけでしっとりと唄っている。凡そ、エラと言えば、「マック ザ ナイフ」に代表されるスキャット一杯の派手な唄が思い浮かぶが、これが彼女の本領では無い。この12曲のスローな大人のムード一杯の曲を聴けば、彼女の魅力が別のところにあることがすぐに分かる。声の使い方、微妙な唄の崩し方、実にうまい。歌詞カードを持ち、分からない英語は辞書で調べ、歌の意味を充分に理解して味わうべきレコードである。

冒頭の1曲目、I'M GLAD THERE IS YOU 詞が Paul Madeira 曲が Jimmy Dorsey 、
In this world of ordinary people, 
extraordinary people
I'm glad there is you
In this world of overrated pleasures, underratedpleasures
I'm glad there is you

(この世の中色んな人、でも、あなたが居るのが嬉しい
この世の中色んな楽しみ、でも、あなたが居るのが嬉しいの)


このしっとりムード、女性ジャズシンガーの宝庫、オランダの歌手に引き継がれている。アン・バートンがその人である。

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追加掲載(120104)
サッチモとのデュエットも良い。