2011年9月18日日曜日

私のジャズ (37)

えっ、日本人
松澤 龍一

Blues for Tee (TBM CD 1852)













最初、聴いたときはびっくりした。えっ、これが日本人! 
黒人よりも黒く、ブルース(正確にはブルーズ)よりもブルースで、体から湧き出る躍動感、とても味噌汁とおしんこと米の飯で育った人間が生み出す音楽では無い。

山本剛と言うジャズピアニスト、佐渡生まれのどこを切っても純粋の日本人である。私が大好きな黒人ピアニストのウィントン・ケリーを彷彿とさせる。名前を言わずに聴かせたら、多くの人がウィントン・ケリーと言うに違いない。ジャズと言う音楽は、このように、人種、民族、国境を越えて広がっていたんだと、なにか嬉しい気持ちになる。


ジャズを聴き始めの頃、白木秀雄が日本のジャズと称して、ハッピ姿で和太鼓を叩いているのを見て、大きな違和感を感じ、それがトラウマになり日本人プレーヤーの演奏はほとんど聴いていない。従ってライブ演奏にもほとんど行かない。もっぱら残された音盤で楽しむ変ったジャズファンである。

ジャズがコンテンポラリーなものであるとすれば、これは邪道であろう。でも、邪道で良いと思っている。ブラスバンドの延長のようなものを聴かされるより、音盤に残されたサッチモやパーカーやコルトレーンの方がはるかに良い。でも、この山本剛、生で聴いてみたい唯一のプレーヤーである。