2011年10月30日日曜日

尾鷲歳時記 (40)

晩秋のウルトラマン
内山思考 

本日休診むらさきしきぶの鍼灸院   思考

どこか似ている君と僕












「昭和怪獣世代」というのがあるとすれば、僕は多分、その中に入る。 幼少時の僕のヒーローは、まず「鞍馬天狗」「笛吹童子」「赤胴鈴之助」「白馬童子」などチャンバラヒーローで、腰に棒切れを差し、母に頼んで風呂敷で覆面をして貰ってはそこいらを走り回ったものである。しょっちゅう何かに躓いては転び、そのたびに顎をしたたかに打ったので「お前は前歯が出ているのだ」と言われ長年それを信じていたが妻に「鉋(かんな)じゃあるまいし」 と大笑いされたので、やっと出っ歯の原因がそれでないことに気づいた。

次に夢中になったのが「月光仮面」「七色仮面」「怪傑ハリマオ」で、こちらは拳銃が武器である。ちょうど銀玉ピストルが町の駄菓子屋兼おもちゃ屋に並び始めた頃で、パシン、パシンと紙箱やおもちゃの標的を打っては楽しんだ。運動会シーズンには巻紙の火薬を鳴らすブリキ製のピストルも露天で買って貰ったが、これは音だけなのでいつもすぐに飽きた。

「ナショナルキッド」「スーパージャイアンツ」あたりでテレビの実写モノは終わり「鉄腕アトム」からアニメーションの時代が始まった。 その頃、映画でしか観られなかった特撮の怪獣番組がテレビにお目見えした。それが円谷プロ作品「ウルトラQ」である。 これには歓喜した。

秋思顔の
ウルトラマン貯金箱
思えば怪獣はスマートでも何でもない。グロテスクで人間社会の建造物を破壊し、人々を恐怖に陥れるだけだ。それまでの悪役は人間で、私利私欲のために非道を尽くした後、正義の味方に成敗され「メデタシ、メデタシ」だったのに、はっきりとした勧善懲悪でない上に人類のエゴや環境破壊が原因で怪獣が出現するストーリーはそれなりに説得力があった。僕も大人になりかけていたのだ。

そんなある日、新しいヒーローがやって来た。全身つなぎ目のないスーツでつり上がった大きな目、三分間しか地球に居られない。「何、これ?」ウルトラマンは僕の最後のヒーローになった。そして 「ウルトラセブン」が始まった頃、僕は恋する少年になっていた。