2011年11月27日日曜日

尾鷲歳時記 (44)

尾鷲の朝日と夕日
内山思考

日本に冬行き亘るポン酢かな 思考 


尾鷲港の朝



















尾鷲の朝は海からやってくる。 「尾鷲よいとこ朝日を受けて浦で五丈の網をひく」と尾鷲節にある。 シンガーソングライターの黒坂黒太郎さんは 「いりえおくのまち…ひがしからあさひのぼり/きょうをはこぶよ/このまちに」(朝日はこぶ町)と歌ってくれた。

三方が山で、一方の海が東に向いている尾鷲へ、朝日はまるでコップに水を注ぐように光を届けてくれる。 夜が明ければ朝が来るのはどこでも同じとわかっていても、早暁まだ薄暗い路地を抜け、あまり人通りのない港へ行く途中で朝日に会うと、1対1の感じがしてとても心地良い。

「お早うさん」 「オウ、今日も頑張れよ、ピカピカー」 という挨拶がそこでなされているかのようだ。その後は、一見昨日と変わらない、しかし新鮮な時間が流れ始める。 日中は何やかやと気ぜわしいので、太陽の存在はまったくといってもいいほど忘れている。たまに空を見上げることはあっても、それは大好きな飛行機がゆっくり高空移動しているのを発見した時ぐらいで、そんな場合はしばらく目で追うこともある。

古道の夕日
この時期は日が短いので二時を過ぎると夕ごころになり、晩ごはんのおかずが気になり始める。 お前には悩みが無いのか、と問うなかれ、楽しい材料だけを憂いと憂いのつなぎにして生活しているだけなのだから。 今日は炭焼のアルバイト(機会があれば触れよう)の日だったのでそれが済んで4時、急ぎ帰って洗濯物の取り込み、これは僕の役目だ。そして紀勢新聞の配達に出る頃、朝日も1日の仕事を終えて夕日に姿を変えて行く。 「もう沈むのかい?」 「ああ、またな、ゴトン」 冬至はまだまだ先だ。