松澤 龍一
CHARLIE MARIANO QUINTET BOSTON DAYS (Camarillo Music FSR-CD-207) |
白いパーカーと呼ばれたボストン生まれの白人アルト・サックス奏者、チャーリー・マリアーノ、彼の初期の録音を集めたのが上掲のCDである。白いパーカーと呼ばれただけあって、その演奏は正にパーカーそのもので、共演しているあまり名の知られていないハーブ・ポメロイと言うトランペッタ―もマイルス・デイビスそのものに聴こえてしまう。
ピアノだけがちょっと違う。左手が強く、いわゆるバップ・ピアニストのタッチでは無い。誰かと思ったら、なんとジャッキー・バイヤードである。彼は始めからこんな弾き方をしていたんだと新しい発見をした。
前々回のJ.R.モンテローズの話に読者からお便りがあった。J.R.モンテローズのリーダー・アルバムに「THE MESSAGE」があると教えてもらった。1959年の録音でトミ―・フラナガン、ジミー・ギャリソン、ピート・ラ・ロッカと共演しているアルバムだとのこと。これは知らなかった。このアルバム、カマリロ・ミュージックと言う会社より発売されている。
「カマリロ」とはあの「カマリロ」かとのご質問があった。有名な「ラバー・マン」セッションの直後、発狂したパーカーを収容した病院が「カマリロ病院」で、その後、退院して「リラクシン・アット・カマリロ」などと言う曲を作っている、あの「カマリロ」のことかとの質問である。「カマリロ」とはカルフォルニアの都市の名前で、そこにあった病院が「カマリロ病院」で、そこにあるレコード会社が「カマリロ・ミュージック」と言った程度のことだろう。
そんなことを考えながら、ふと手にしたこのCD、なんと、カマリロ・ミュージック、偶然の一致とは恐ろしい。 チャーリー・マリアーノは一時日本人と結婚していた。相手は有名なジャズ・ピアニストの秋吉敏子。ボストン生まれの白人アルト奏者と満州生まれの日本人ピアニストが、その蜜月時代に作ったアルバムがこれである。このアルバムに残されているチャーリー・マリアーノが作曲した曲の題名に、彼の秋吉敏子への熱愛ぶりが偲ばれる。