松澤 龍一
「AFTER MIDNIGHT」 (Capitol CDP 7 48328 2) |
ナット・コール、ピアニストである。テディ・ウィルソンばりのスウィンギーなピアノを聴かせてくれた。時々、唄も歌った。少しして、名前の間にキングを入れて歌手に転向した。ナット・キング・コールの誕生である。
中学一、二年の頃、田舎の街に一軒だけあった、秋にはコオロギの鳴く映画館で「ヨーロッパの夜」と言う映画を見たことがある。ヨーロッパ各地のショービジネスを紹介した映画だった。なぜかナット・キング・コールが出演をしていた。ピアノトリオで弾き語りで歌を唄っている。やけに舌が赤かった。この赤い舌が妙に印象的だったが、それよりも印象的だったのはパリのナイトクラブのストリップティーズ、田舎の中学生には刺激が強すぎた。
上掲のCDはナット・キング・コールのピアノトリオの演奏を集めたもので、当然、歌も唄っている。本来のピアノ、ベース、ギターと言うドラムの無い変則的なトリオに今回はドラムを加え、さらにスイング系の名手をゲストに迎えて、軽快なスイングピアノを聴かせている。オスカー・ピーターソンがデビューした頃も、確かドラムレスのトリオだったと思う。ナット・キング・コールを真似たのかも知れない。但し、オスカー・ピーターソンの歌は聴いたことがあまり無い。
ナタリー・コールはナット・キング・コールの娘である。デュエットでナット・キング・コールの往年のヒット曲 Unforgettable をカバーしている。しかし、この時、ナット・キング・コールはこの世にいない。
Merry Christmas !