2012年1月1日日曜日

尾鷲歳時記(49)

年の初めのためしとて
内山思考

ふるさとの星の大粒年新た  思考 

題・新春












明けましておめでとう御座います。毎年、テレビのカウントダウンが終わって新年になると、僕は万全の防寒をして初詣に出掛ける。まず向かうのが妙長寺だ、路地を抜けて二車線の道に出ると、もう沢山の参詣客がそれぞれにかたまって歩いているのに出くわす。顔はよく見えない。 この人たちは皆、尾鷲神社を目指しているのだ。

その流れに逆らうように新年の闇を海の方へ行くと、五分程で日蓮宗・北浦妙長寺に着く。本堂に明かりが灯り、青木上人の読経が聞こえる。お賽銭をあげ祈願合掌。 その後、もと来た道を引き返して今度は尾鷲神社へ、響く除夜の鐘は曹洞宗・金剛寺からのものだ。嗚呼、心が改まる。 神社はもう沢山の人だかりである。 参道には屋台も出て、そこも大賑わい。 境内の焚き火が天を焦がさんばかりの勢いで炎を上げ、樹齢千年とも言われる楠の木の巨体を照らしている様は見事と言うほか無い。

ライトアップされているから、ここでは知り合いがいると御慶を交わしたりもする。北国ではないけれど、寒い深夜だから高齢者や幼児の姿はあまりなく、やはり新年のエネルギーを強烈に吸収、あるいは発散する若者たちが多く見られる。ここは本当に過疎の尾鷲なのか。 法被に鉢巻の連の衆が笛と太鼓で「寄せ太鼓」を演奏していてその名調子がまた気持を高揚させてくれる。


噂の珍味・サンマの燻製
参拝の後、喜捨と引き換えに紙コップに入った熱い甘酒を頂き少しづつすすると冷えた五臓と六腑に元気が巡って行くような気がする。アルコール分があるのか無いのかよくわからないけれど、下戸の僕にはこれで充分、年に一度のほろ酔い?気分を味わいながら帰宅して就寝。 本格的な元日の目覚めは七時頃だ。先に起き出した妻が雑煮の完成を声高に告げるのを聞いてゆっくり食卓につく。やや照れながら家族で新年の挨拶を交わし、「誕生日おめでとう」は元日生まれの妻への御慶。 こうして内山家の一年は始まるのである。