2012年1月1日日曜日

俳枕 江戸から東京へ(52)

隅田川東岸/三囲(みめぐり)神社 
文 : 山尾かづひろ 
三囲神社










都区次(とくじ):明けましておめでとうございます。
江戸璃(えどり):本年もよろしくお願い致します。元旦だから七福神詣でに行きましょう。
都区次:今ちょうど東京メトロの浅草駅ですから、「隅田川七福神」がよろしいでしょう。
江戸璃:それでは吾妻橋を渡って隅田川東岸へ行くわよ。
都区次:元旦で空気が澄んでいて気持ちがいいですね。隅田川も川下の橋が良く見えます。

橋に橋重ね大川初景色 大矢白星

都区次:ところでこの「隅田川七福神」が江戸で最初に出来た七福神ですか?
江戸璃:隅田川に沿っていて風光明媚なのでそのように思われるけど違うのよね。江戸で最初の七福神は宝暦年間(1751~1764)に出来た「谷中七福神」なのよ。「隅田川七福神」は蜀山人らが「谷中七福神」に刺激されて文化文政(1804~1830)の頃に作ったものなのよ。
都区次:幟(のぼり)や露店が見えて雰囲気が出てきましたね。最初は三囲神社ですね。この神社は恵比寿、大黒の二福を合祀するそうですが由来は何ですか?

参道に悴かむ老の小あきなひ 品田秀風

江戸璃:三囲神社は、現在地より北方に田中稲荷として創建されたと伝えられ、文和年間(1353-1355)近江三井寺の僧源慶が東国遍歴の際に壊れた祠を見つけ、弘法大師のゆかりと聞き改築したそうなのよ。改築しようとした際、土中より白狐にまたがる老翁の神像を得たのよ、そのとき白狐が現れて神像を三回まわったことから三囲神社と改称したそうなのよ。
都区次:境内には数多くの石碑が立っていますが、宝井其角の雨乞いの句碑は有名だそうですね。
江戸璃:元禄6年(1693)、旱魃の時、俳人其角が偶然、当地に来て、地元の者の哀願によって、「夕立や田をみめぐりの神ならば」と一句を神前に奉ったところ、翌日、降雨を見たそうなのよ。このことからこの神社の名は広まり、京都の豪商三井氏が江戸に進出すると、その守護神として崇め、三越の本支店に分霊を奉祀したのよ。
都区次:境内の狛犬の近くには意表を突くようなライオン像があるのですが何ですか?
江戸璃:三越百貨店の入口に置かれているライオン像と同じもので、平成21年に三越から奉納されたものなのよ。かつては池袋三越店頭に置かれていたけど、その店の閉店に伴い、神社から申し出があって、三越と強い縁を持っている事から奉納の運びになったのよ。


ライオン像














雨乞ひの句碑の上なる初御空   長屋璃子(ながやるりこ)
オートバイ後ろに女都鳥   山尾かづひろ