2012年1月1日日曜日

私のジャズ(52)

パンソリ
松澤 龍一

 SIMCHOGGA The Epic Vocal of Pansori
(JVCG-5019)












パンソリ、人の名前では無い。韓国の言葉で、パンは「場」、ソリは「声」や「音」を意味する。韓国、それも南部の全羅道で広く行われてきた伝統的な歌謡の一種である。日本で言えば義太夫とか浪花節のような語りものである。多くはブク(鼓)と呼ばれる太鼓と語り手で進められる。パンが「場」と言うことであれば、広場とか道路で行われた大道芸なのかも知れない。語り手は扇子一本で時には謡い、時には語り、時には踊り、色々な人物を演じる。これに被さる太鼓のリズムが絶妙で、それに加えて掛け声、合の手で語り手を鼓舞する。

韓国の言葉が分からないので、語りの内容を掴むことは出来ないが、このリズムは独特で、なんとも言いようのない快感をもたらせてくれる。リズムと言うより、地から湧き出て来るような、もっと根源的なビートのようなものである。朝鮮半島に生まれた独特のリズムだろう。

韓国は今までに一番多く訪れた国で、合計すると100回近くは行っている。すべて仕事関係だったので、ソウルを中心とした北部が多かった。全羅道と呼ばれる南部には数回行った。全羅道は昔は百済で、北部(慶尚道)の新羅に滅ぼされたと言う歴史を持つ。従って、今だに韓国でも全羅道を特別視する傾向がある。事実、全羅道からは一人しか大統領が出ていない。その一人が金大中である。そう言えば光州事件の光州も全羅道にある。