松澤 龍一
DIZZY GILLESPIE DUETS (Verve 835 253-2) |
ディジー・ガレスビー、パーカーの盟友と言われ、モダンジャズの黎明期のビ・バップ時代に登場したトランペッタ―。不思議と人気が無い。彼の代表アルバムはと言われてもすぐには思いつかない。パーカーの盟友と言われていても、実際のパーカーとの共演の数ではマイルス・デイビスの後塵を拝す。
では、彼がヘボなトランペッタ―かと言うと、とんでもない、一流も一流、超一流のトランペッタ―である。ルイ・アームストロングの伝統を引き継ぎジャズの本流を守ってきたプレーヤーである。彼がいなければ、クリフォード・ブラウンもリー・モーガンもフレディー・ハバードも、さらにウィントン・マルサリスもいない。一時、ルイ・アームストロングを真似て、道化路線に走ってしまった。頬を目いっぱい膨らませて吹くスタイルや、トランペットの菅を上向きに曲げたりのパフォーマンスでショー・ビジネスでの成功を求めた。これがジャズ・ファン、特に日本のジャズ・ファンには評判が悪い。
上掲のアルバムはソニー・ローリンズとソニー・ステットの、サックスのヴァーチュオーゾ二人とそれぞれ数曲づつ競演をしている。ソニー・ローリンズやソニー・ステットとの競演となれば、ディジー・ガレスビーも本気にならざるを得ない。ジャズ・プレヤ―としての本領を存分に発揮している。ソニー・ステットの本職はアルト・サックスであるが、一曲テナー・サックスを吹いている。これが素晴らしい。これだけのテナーが吹ける奏者が今いるのだろうか。そう言えば、ソニー・ステットも人気はも一つだった。理由は上手すぎたからかも。
では、ガレスビーの素晴らしいトランペットを聴いてみよう。