内山思考
大陸や建国の日も動きおり 思考
風邪を引くと 読む、書く、聴くの意欲なし |
僕の場合、体調の良し悪しを測るバロメーターは、食欲である。いくら体力に自信があるといっても、やはり風邪をひくことだってある。 今年も正月早々、A型インフルエンザに罹った。「アレ、やられたかな?」とまず思う。お腹がかすかに痛んだり、皮膚がピリピリしたり首筋や背筋に悪寒を感じてなかなか治まらない。そうすると昼餉、夕餉の量がガタンと落ち、やがて熱が三十七度を越え、「青菜に塩」の状態になってしまうのだ。
こういう人間をこの地方では病(やまい)弱いと表現する。普段、大言壮語していても、ちよっと具合が悪いと急にだらしなくなる者のことだ。残念ながら僕もその範疇らしく、いつも二合飯を食らっていながら、熱が出るとうどんの一啜りもしたくなくなる。 その点、妻は動脈瘤の手術で頭蓋骨の一部を一度取り外したり、体の方々を切ったり接いだりしているから、度胸が座っているというか少々の事には動じない。「食べないと薬が効かないよ」「熱が下がったらいつまでも寝てたら駄目」等々、非情とも取れる発言を連発する。
梅かつおを作った後の 梅干し種を貰って梅茶に |
しかし、やかましいわい、と思いながらも結局、指示通りに動いて僕は回復してゆくのである。 風邪の思い出と言えば、二十年ほど前、バスツアーで名古屋へ行った時、夫婦でインフルエンザに罹ったことがあった。あれには参った。帰るや否や高熱が出ておまけにガタガタと震えが止まらない。「なんじゃコリャー」と松田優作ばりに叫びながら布団をかぶって耐えたものだ。一緒に行った知り合いも何人かが同じ症状で、ある人は、気分が悪くなってトイレにかかんだら、入れ歯を落として大損をしたそうだ。
もう一つは、一人で上京した際、時間つぶしに博物館に入ったら刀剣展をしていて、見ている内にゾクゾクと寒気に襲われその時も寝込んでしまった。あれは日本刀の妖気に中てられたに違いない。