2012年2月19日日曜日

私のジャズ(59)

カーボベルデ人 ?
松澤 龍一

Blowin' The Blues Away
(Blue Note BST-84017)












カーボベルデ人、聞きなれない言葉である。実はカーボベルデ共和国と言う国があるそうだ。ポルトガルの植民地が独立した国とのこと。大西洋の北、アフリカの西沖合いにある小さな島を寄せ集めた国らしい。このカーボベルデ人の父とアイルランドとアフリカの混血の母の間に生まれたのが、ホレス・シルバーと言うピアニストである。ハード・バップ全盛時代に人気が高かった。純粋の黒人が作りだす音楽とちょっと違う、ファンキーと言っても、黒人の汗臭さより、もう少し乾いたラテンの風を感じさせてくれる。彼のラテンの血がそうさせているのであろう。

上掲のCDと同じメンバーで来日をしている。契約の関係で、レコードの国内盤は発売されていなかった。高価な輸入番でしか聴けない時代、よくこの興行を敢行できたと、今だに不思議だ。さらに昼公演のテレビ中継まであった。このテレビが見たくて、中学を仮病で早退した思い出がある。素晴らしい演奏であった。周りの大人たちの評判も、今まで来日したプレーヤーの中でピカ一とのことだった。子供心にも分かるアート・ブレキーの手抜きぶりに比べればえらい違いだった。

この来日には大物歌手が同行している。白人女性歌手のクリス・コナーだ。「セニョ―ル・ブルース」などを唄った。当時食い入るように読んでいた「スイング・ジャーナル」誌に彼女の来日に関する記事でこんな表記がある。「...いつも彼女に寄り添っている女性秘書、どうもあの彼氏らしい...」 女性なのに彼氏?きっと何かの誤植に違いないとずっと思ってきた。彼女が有名なレズビアンであることを知ったのは、それから随分と後のことである。