2011年1月16日日曜日

私のジャズ(5)

アラバマに星墜ちて
松澤龍一


Cannonball in Chicago(Mercury UCCU-5032)CD











今でもこれがジャズ史上に於ける最高のバラードプレイだと信じている。マイルス・デイヴィスのセックステットより親分のマイルスを外したメンバーで録音したキャノンボール・アダレイのCannonball Adderley Quintet in Chicagoと題されたアルバムの2曲目Stars Fell on Alabama (アラバマに星墜ちて)の演奏のことである。アメリカのご当地ソングの名曲をキャノンボールはアルトサックスのふくよかな音色と伸び伸びとしたフレージングで唄いあげている。キャノンボールのソロに続くウィントン・ケリーのピアノが、また、たまらなく良い。
このブログを書くにあたって聴き直してみたが、このアルバムのウィントン・ケリーは全編にわたり絶好調、彼のベストアルバムはこれだと言いたくなる。録音されたのは1959年。60年代に入ると、共演しているテナーのコルトレーンはフリージャズへ、マイルスはロックへ傾倒を深めてゆく。そんな中、キャノンボールは弟のコルネット奏者、ナット・アダレイと組んでファンキーなジャズでヒットを飛ばす。当時のジャズファンと称する若者からは商業主義と批判され、軽蔑をされる。当時はジャズの好きな仲間にキャノンボールが好いなどとはおくびにも出せなかった。今こうして言えるのも、それなりの年輪を経てきたせいなのかも知れない。

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追加掲載(120104)
では、ジャズ史上の最高のバラード・プレイをじっくり聴こう。