松澤 龍一
説BACK TO BACK (Verve POCJ-1930) |
元々、サックス系の木管楽器やトランペット、トロンボーンの金菅楽器は、クラシック音楽のために創られ、クラッシック音楽に使われてきた楽器である。でも、これらの楽器の特性を生かし、これらの楽器の魅力を知らしめたのは、圧倒的にジャズだと思う。クラシック音楽で使用されるこれらの楽器の無味乾燥な音色と単調なフレージングを聴けばすぐに分かる。マイルスのトランペットの音色、ローリンズのテナーサックスの豪快なフレージングに、これらの楽器はまさにジャズをやるために生まれてきたとしか言いようがない。ジャズ発生当時、南北戦争で敗れた南軍の軍楽隊から大量に菅楽器が流れたのが、ジャズに菅楽器が使われた大きな理由の一つとか。
ジョニー・ホッジス、言うまでもなく、デューク・エリントン楽団のスター・プレーヤーである。これだけの人気と実力を兼ね備えながら、エリントンの一楽団員を続け、自分のバンドを持たなかった人である。彼のアルト・サックスから醸し出される音、その音色は、月並ではあるが、天下無双、天下一品としか形容しようがない。ふくよかなフレージング、余裕たっぷりの語り口(音楽なので「唄い口」かも知れないが)は昨今のブラスバンドまがいのジャズプレーヤーと称する人たちはぜひとも学んでほしい。
このCDはジョニー・ホッジスが、彼の名前で吹き込んだ録音の一つである。ピアノに御大のデューク・エリントンを迎え全編ブルースの快演となっている。「ラブレス・ラブ」のテーマの部分、楽器を奏でているとは思えない。サックスのリードを通し唄が聞こえる。エリック・ドルフィーの馬の嘶きスタイルはジョニー・ホッジスを真似たとずっと思ってきたが、このCDを聴き直してみて、やっぱりそうだと思いを新たにした。
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追加掲載(120104)
ジョニー・ホッジスの暖かな音色、軽快なソロ。