2011年7月10日日曜日

私のジャズ (28)

アン・バートンでしっとりと
松澤 龍一

 BALLADS & BURTON  (Epic ESCA 5041)












今までに付き合った人種でオランダ人ほど英語の上手い人種はいない。ほぼ母国語と言って良いくらいだ。笑い話にオランダでは乞食も英語を話すと言われている。普通の人は英語以外にドイツ語、フランス語、スペイン語あたりは話す。本当に語学の天才と思える人種である。体もでかい。男性の平均身長でゆうに180cmは越すだろう。考え方も大きい。あるいは大まか、がさつ、大胆である。ビジネスで付き合うオランダ人には苦労をさせられることが多かった。リストラなど実に情け容赦なく行う。血も涙もない首切りを平然と行う。日本人にはとても付いて行けない。

アン・バートン、オランダ人である。オランダの女性ジャズ歌手である。彼女ほど日本人の琴線に触れる唄い方をする歌手はいないと思う。派手では無い。大きなコンサートホールでビッグバンドを伴奏に唄える歌手では無い。小さなクラブでピアノの伴奏で静かに聴くべき歌手である。唄い方が細やかで、ちょっと訛のある英語も魅力的だ。実に丁寧に唄っているので、英語も聴き取り易い。YuTubeに彼女の歌が載っている。これらを聴いて頂くのが、てっとり早い。私のお気に入りは Bang Bang  と言う曲で、子供の頃、鉄砲ごっこをした幼馴染と恋仲になり、最後は別れると言う内容の歌である。


聴き終えて感じるのは、ニューヨークのジャズクラブでは無い。パリ、アムステルダム、ブラッセルのようなヨーロッパの古都、そこの小さなジャズクラブである。石畳の路、街路樹が繁り、時には枯葉が舞っているような。

オランダ人にもこんな細やかな感覚があるのかと驚かされたが、どうも自分の極めて狭い経験だけで、ある人種を類型化してしまうと言う罠に陥っていたのだと反省する。そう言えば、レンブラントだってフェルメールだってオランダ人だ。