2013年8月4日日曜日

2013年8月4日の目次

■ 俳枕 江戸から東京へ(135)
       山尾かづひろ  読む

■ 尾鷲歳時記(132)
       内山 思考    読む

俳枕 江戸から東京へ(135)

山手線・日暮里(その35)
根岸(上根岸82番地の家⑳「子規庵」その2)
文:山尾かづひろ 

子規虚子の弟子碑











都区次(とくじ): 子規は神戸病院に2ヶ月間入院した後、明治28年7月23日から須磨保養院へ1ヶ月間療養をしますが、症状の悪い時分はどうしていたのですか?

 看護とし虚子滞在須磨の夏 熊谷彰子

江戸璃(えどり):高浜虚子が看護に当っていたのよ。須磨保養院での子規の療養生活は楽しかったらしく、虚子が「居士は再生の悦びに充ち満ちていた」と記していたほどだったのよ。ちょうど状況を表した二人の句の子弟碑が須磨にあるのよ。

 ことづてよ須磨の浦わに昼寝すと 正岡子規
 月を思い 人を思ひて須磨にあり 高浜虚子

都区次:虚子の文章で、この物故者のような「居士」を「子規居士」などと使っているのですが何ですか?
江戸璃:「居士」には戒名の末尾に添える語の他に、仕官せず民間にある高い学徳の人を指す場合と、男子の性格などを表すときに付ける「謹言居士」「一言居士」等の場合があるけれど、二つの内のどちらからかより来てると思うわよ。
都区次:ところで今日は日暮里からどこへ行きますか?
江戸璃: 子規由来の人形町で甘味処に入ってみない?
人形町で甘味処














夏さぶや人形師らの棲みし町  長屋璃子(ながやるりこ)
マスタードほどよく効きし心太 山尾かづひろ


尾鷲歳時記(132)

涼しくなる話
内山思考

若者ら幽霊谷へ蛍見に  思考



幽霊は苦手だが、大の妖怪ファン












幽霊は夏の季語だという。昔の季寄せを探せば載っているかも知れないが、なにせ暑いから、二階の書架まで行く気がしない。百物語が納涼を目的として行われていたのは聞いたことがある。一人一話が三分として5、6時間はかかる計算だから大変である。なかなか骨の折れるイベントだったと思われる。しかし、幽霊はアトラクションではないので、季節を限定されるのは彼女ら(彼ら)も心外なのではなかろうか。

僕は怖い話はあまり好きではないので、なるべくそんな本も映像も見ないようにしている。人がいる限り幽霊の存在はいわば不易だが、時代の文化(流行)とも切り離せない。例えば車に乗り込み(運転はしない?)、テレビから這い出し、ケータイを利用するといった具合である。その内に人類とともに宇宙に進出し、火星に現れたりする可能性も大だ。これは決して茶化しているわけではないので、「バカにしてるのか」と抗議に来ないでいただきたい。

先日、あるお寺の方と食事中に怪奇談になり、僕が持ちネタを二つほど披露したあと、そのお坊さんが修行中の話をしてくれた。仲間と二人、自動車で知らない土地を走っているうちに道に迷い、何気なく止まった所がある慰霊碑の前だったそうである。それはよく知られた事件の犠牲者のためのものだった。車から降り、手を合わせて帰ろうとするとどこからともなく、「お坊さん、お坊さん」と呼ぶ声。けれどもあたりに人の気配は無い。

炭焼窯も顔に見える

不思議に思いながら車に乗り込んだ時、もう一人が「あれ、何で俺達が僧侶だとわかったんだ?」と言った。それもそのはず、二人は当時流行のスタイルで、しかも帽子を被っていたのだ。一瞬の後、彼は思い切りアクセルを踏んでその場を離れたという。で帰ってから父親(ご住職)に報告したら「バカモノ!、それだったら何故もう一度慰霊碑へ戻ってお経をあげて来なかったのだ」と散々にお目玉を食らったのだそうだ。