2014年11月23日日曜日

2014年11月23日の目次

■ 俳枕 江戸から東京へ(203)
       山尾かづひろ  読む

■ 尾鷲歳時記(200)

       内山 思考    読む

俳枕 江戸から東京へ(203)

谷中(その12)
文:山尾かづひろ 

領玄寺本堂










都区次(とくじ): 前回は谷中の神院(いしんいん)でしたが、今回はどこですか?

色淡く一輪咲いて返り花  熊谷彰子

江戸璃(えどり):今回も大矢白星師が8月のお盆休みに谷中を歩いた分のトレースの続きなのよ。というわけで谷中の領玄寺(りょうげんじ)へ行くわよ。領玄寺は日蓮宗で、創建年代等は不詳ながら、谷中感應寺(現天王寺)9世領玄院日長聖人が中興したといわれているわね。また領玄寺を中心にしたこの辺りには領玄寺貝塚があるのよ。
都区次:領玄寺貝塚の名が出てきましたが説明してくれますか?
江戸璃:領玄寺の本堂や墓地には貝塚があるけれど、領玄寺を中心に不忍池の谷(根津谷)の東縁に広がる縄文時代中期(紀元前3000年~2000年ころ)の貝塚なのよ。ハマグリ・アサリ等の貝殻、石斧(せきふ)・石鏃(せきぞく)と呼ばれる石製矢じり等の石器、縄文土器などの遺物が発見されているわね。

領玄寺山門










八つ手咲く広き寺庭に憚らず  長屋璃子
屈強の男手出入り冬構     山尾かづひろ

尾鷲歳時記(200)

だいじん汁 
内山思考

老眼にしか見えぬもの冬うらら   思考

汁の写真を撮り忘れてレシピのみ








和田悟朗さんの近作に

だいこんとにんじん鶏肉秋汁に  悟朗

がある。何だかとても美味しそうなので、電話をして、奥さんにレシピを書いて下さいとお願いした。2~3日後の句会の日に、少し早くお迎えに伺うと和田さんはまだテレビの部屋でくつろいでおられ、奥さんが「こういうものですが、お口に合いますかどうか」とホワホワ湯気のあがるお椀を僕の前に置いて下さった。

和田家の急須は左利き用
頂戴しますと箸をとり、「お宅も左利き?」「いえ、本当は右なんですが、和田先生の真似をして二十年来左で食べてます」の会話のあと、ジルジルとひと啜りすると・・・あな美味しや・・・。得も言われぬ旨味が口中から喉へと降りていく。
柔らかく煮えた大根と人参に鶏肉の充実感、舌の上に遊ぶ春雨、それらすべてが胃に届くと同時に滋養となる感じがする。自然に三人は微笑んだ。汁の名は、の問いに和田さんは「だいじんじるや」と答え、「お大尽の汁ですか?」と再度問えば「大根と人参の汁だから」と奥さん。「じゃあ、大参汁…」、「いやあ」と首を傾げて奥さんを見た和田さんは「ひらがなやなあ」「で、汁だけ漢字ですか」「そうや」と言うことで、命名は完了したのである。


「だいじん汁」の作り方は次の通り。
まず材料(三人分)
大根100グラム:厚さ2~3ミリのイチョウ切りに
人参40グラム:厚さ同じで輪切り
トリモモ肉100グラム:ひと口大
出し汁(カツオ):500ミリリットル、
季節の香り、シメジ、エリンギ、ミョウガ、エノキ茸、大根の葉(ヤワラカイ部分)、カイワレダイコン、はるさめ、ウスあげ等々。

作り方
①分量のダシ汁の中へ大根と人参を入れ、柔らかくなるまで煮る。
②野菜が煮えたらトリ肉を一口大の半分位に切ったものを入れ、もう一度煮て薄口醤油で味をととのえる。
③季節の香りを入れ、煮え上がれば完成。

ところで、和田さんのエッセイにたびたび登場する「ワラビ汁」のレシピも欲しいのだが、それは来年の楽しみにしたいと思う。