2014年11月16日日曜日

2014年11月16日の目次

■ 俳枕 江戸から東京へ(202)
       山尾かづひろ  読む

■ 尾鷲歳時記(199)

       内山 思考    読む

俳枕 江戸から東京へ(202)

谷中(その11)
文:山尾かづひろ 

頣神院本堂









都区次(とくじ): 前回は谷中の延壽寺でしたが、今回はどこですか?

羽虫とび十一月の切通し  佐藤照美

江戸璃(えどり): 今回も大矢白星師が8月のお盆休みに谷中を歩いた分のトレースの続きなのよ。というわけで?神院(いしんいん)へ行くわよ。頣神院は山号を象頭山と呼び、臨済宗妙心寺派の寺院なのよ。湯島麟祥院第八世頑海が本郷湯島に明和5年(1768)に創建し、明治20年(1887)に当地へ移転したそうよ。寺内には帝釈天(たいしゃくてん)が祭られているのよ。幕府大奥・春日局の麟祥院(りんしょういん)とは姉妹関係にあたるそうよ。

都区次:麟祥院の名が出てきましたが説明してくれますか?

江戸璃:麟祥院は東京都文京区にある臨済宗妙心寺派の寺院なのよ。山号は天沢山で、徳川家光の乳母として知られる春日局の菩提寺だったのよ。寛永元年(1624)、春日局の隠棲所として創建。はじめ、報恩山天沢寺と呼ばれたけれど、春日局の法号をもって「天沢山麟祥院」と号するようになったのよ。

麟祥院本堂










初しぐれやさしけれども淋しとも  長屋璃子
傘をさすほどなくやみぬ初時雨  山尾かづひろ

尾鷲歳時記(199)

冬が来て 
内山思考 

冬座敷横切る電気コードかな 思考

妙長寺の薪ストーブ










岩手の藤沢さんから雪便り(メール)が届いた。急に「もっさ、もっさ」と降り出したので、自家用車は冬用タイヤを履いていず、急きょ台車(代車?)で外出した「父ちゃん」が心配だとあった。立冬が過ぎても、尾鷲と名古屋を行き来している僕のまわりにはまだ秋の名残がたっぷり残っていて、北国へいきなりやってきたという冬将軍のイメージが掴めない。メールには(青木)健斉さんと思考さんに吹雪いて前方が見えない状態での走行を体験して貰いたいとあった。新しい除雪車(機)を購入した、とも。

前が見えない程の豪雨なら日本有数の多雨地である尾鷲人はなれているけれど、雪には馴染みが薄いから自家用除雪車がいくらぐらいするものか見当もつかない。藤沢さんたちは来年の雪解けまで一体どんな日常を過ごすのだろう。しかし、いくら東紀州が温暖だといっても冬であることには変わりなく、それどころか、なまじ日中が好天気だったりすると、中途半端な寒さを味わうことになる。灯油ストーブをつけたり消したり、厚着したり一枚脱いだりといった具合で、特に僕などは暑がりの寒がりだから、加減がややこしい。

一言で表現すると、このあたりの冬は「薄ら寒い」冬なのである。先日、句会用の三色ボールペンを買いにホームセンターに行ったら青木夫妻に出会った。薪ストーブが傷んだので買い換えを考えているとのこと。見ればこの地方ではあまり馴染みのない薪ストーブが三点展示されている。妙長寺の玄関の三和土には小さな薪ストーブがあって、訪れた客はホカホカとした温もりを感じながら応対を受けるのである。

わが家は湯たんぽ派
暖を取るとよく言うが、電気、湯、ガス、灯油それぞれの持ち味がある中で、やっぱり「赤い炎」の暖かさが一番人間を癒やしてくれる。チロチロと燃える炎は体の奥に眠っている原始の記憶を蘇らせてくれるようである。これから本番を迎える尾鷲の冬、青木家を訪れる客をどんな薪ストーブが迎えてくれるのだろう。