2014年1月26日日曜日

2014年1月26日の目次

■ 俳枕 江戸から東京へ(160)
       山尾かづひろ  読む

■ 尾鷲歳時記(157)
       内山 思考    読む

俳枕 江戸から東京へ(160)

山手線・日暮里(その60)
根岸(上根岸82番地の家(42)「子規庵」)
文:山尾かづひろ 
 
護国院










都区次(とくじ):前回は水月ホテル鷗外荘と上田邸でしたが今日はどこへ案内してくれますか?
江戸璃(えどり):前回同様、大矢白星師に案内してもらったコースの続きだけれど、上田邸の前から歩くわよ。右側の交番を右折すると、谷中台地へかけての坂道となるわよ。これが清水坂よ。昔は台地から清水が湧いていたので清水坂となったわけね。
 
またの名を暗闇坂と寒鴉鳴く  冠城喜代子
 
江戸璃:樹木も繁茂していたので別名暗闇坂となったわけ。右手の動物園の塀があるでしょ。白星師と来た20年前には左手に明治時代の土蔵が残っていてね、塀と土蔵の間から、東照宮の五重塔が木立の上に頭を出していてクラシカルな眺めだったのよ。ただし今日のように不忍池から登って来ると、振り向かない限りお目にかかれない景色だったわよ。右側の塀が都立上野高校の塀に変ってしばらく、道なりに右折した三差路の角が護国院よ。門前に公衆トイレがあるのですぐにわかるわよ。寛永寺の子院ではあるけれど、享保7年(1722)の再建で、間口7間、奥行5間という大廈でね、堂内に上がって大黒天の立像、その背後に重なるように掛け物の大黒天の画像が拝まれるのよ。この画像は徳川家光の寄進だそうよ。
都区次:ところで、この後どこへ行きますか?
江戸璃:本当に寒いわね。万世橋の「肉の万世」で熱燗を飲みたくなっちゃった。
都区次:いいですね。行きましょう。

スダジイと桜の老樹










人日や早も世俗に紛れたる  長屋璃子(ながやるりこ)
能面を掛けたる酒場水仙花  山尾かづひろ
 
 

尾鷲歳時記(157)


花と書と
内山思考


寒緋桜燃えて八重岳風強し  思考

八重岳の寒緋桜








沖縄北部本部(もとぶ)半島にある八重岳(453㍍)で、18日から桜まつりが始まると聞き、恵子、ヒロコさんと三人で出掛けた。途中、名護のA&Wでヒロコさんの友人ケイコさんと待ち合わせ、地理に詳しい彼女の車に先導して貰って本部町に入った。八重岳は二度目、八年前最初に訪琉した時は4月だったので、いつか桜の季節に来られるといいね、でも1月に花見なんて不思議やねと恵子と話し合ったのを思い出す。

ケイコさんは脇道から山上を目指しているようだ。それでも、方々に桜の緋色が見え始めた。まるで桃の花のようだ。その彩りが沖縄の山野の緑に見事に映えている。「あ、咲いてる」「こっちにも」 と内山夫婦は大喜び、中に白い花もあってそんな種類があるのかと後でケイコさんに聞くと何と梅の花だった。

やがて桜並木に出た。山の裾から山頂まで約七千本といわれる名所である。ここはヤマトのように座を設けて花を楽しむのではなく、言わばドライブスルー感覚なのだ。窓を開けると風が冷たい、遠く海が見える。日本一早い桜を眺めたっぷりと眼福を肥やした後は山を下って、北山(今帰仁)城址へ向かった。でもこちらの桜はまだつぼみ、寒緋桜が寒い方から開花するという話は本当だったのだ。

田場珠翠さんと
残念だなと帰りかけたら城内の文化センターの前に「田場珠翠筆文字あーと展」のポスターが。彼女は、沖縄で今売り出しの書道家で、刷毛やブラシなどを使った筆を選ばぬ自由闊達な書体が話題を呼んでいる。丁度よかった。一度、生の作品を鑑賞したいと思っていたのだ。「田場さんに会えないかな?」と何気なく呟いたら、丁度後ろを通りかかったおじさんが「タバシュスイいますよ、どうぞ」と笑いかけてくれたので、一緒に会場へ入る。出会った本物?の珠翠さんはテレビの画面(泡盛のCMなどに出演中)で見る以上に魅力的な女性であった。そして話している内に、先ほどのおじさんが彼女のお父さんだったことを知った。