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俳枕 江戸から東京へ(111)
山尾かづひろ 読む⇒
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尾鷲歳時記(108)
内山 思考 読む⇒
2013年2月17日日曜日
俳枕 江戸から東京へ(111)
山手線・日暮里(その10)
根岸(上根岸88番地の家③)
文:山尾かづひろ
都区次(とくじ):陸羯南は子規を新聞「日本」に入社させるつもりで編集長の古島一雄に逢ってみてくれと指示したところでしたね。
江戸璃(えどり):新聞「日本」は雉子町(千代田区神田司町2丁目)にあって、古島はそこで子規に逢って色々聞くわけよ。子規から大学があと1年残っているが、試験のために学問をするのが嫌になったと聞くと、大学卒が嫌いな古島は子規のこの一言で子規を気に入ったのよね。それはそれで良いのだけれど、子規の使い方が分らない。そこで時事を風刺するような俳句を試しに作らせたわけ。子規は即座に「君ヶ代は二百十日も荒れにけり」と作り、古島はうまいことを言いやがった、と感服して以後時事をよみ込んだ俳句を作らせたわけ。
編集長唸らす一句野梅咲く 吉田ゆり
都区次:そろそろ梅の季節になりましたが、子規は向島百花園に行ったことがありますか?
江戸璃: 子規は「入口に七草植ゑぬ花屋敷」という句を残しているし、日暮里から言問通りを歩いて簡単に行けるから他の時季に行っても不思議ではないわね。
暮れ初めて梅匂ふ道狭まりし 長屋璃子(ながやるりこ)
梅の香を運ぶ瀬音のありにけり 山尾かづひろ
根岸(上根岸88番地の家③)
文:山尾かづひろ
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新聞「日本」創刊時の社員 |
都区次(とくじ):陸羯南は子規を新聞「日本」に入社させるつもりで編集長の古島一雄に逢ってみてくれと指示したところでしたね。
江戸璃(えどり):新聞「日本」は雉子町(千代田区神田司町2丁目)にあって、古島はそこで子規に逢って色々聞くわけよ。子規から大学があと1年残っているが、試験のために学問をするのが嫌になったと聞くと、大学卒が嫌いな古島は子規のこの一言で子規を気に入ったのよね。それはそれで良いのだけれど、子規の使い方が分らない。そこで時事を風刺するような俳句を試しに作らせたわけ。子規は即座に「君ヶ代は二百十日も荒れにけり」と作り、古島はうまいことを言いやがった、と感服して以後時事をよみ込んだ俳句を作らせたわけ。
編集長唸らす一句野梅咲く 吉田ゆり
都区次:そろそろ梅の季節になりましたが、子規は向島百花園に行ったことがありますか?
江戸璃: 子規は「入口に七草植ゑぬ花屋敷」という句を残しているし、日暮里から言問通りを歩いて簡単に行けるから他の時季に行っても不思議ではないわね。
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向島百花園 |
暮れ初めて梅匂ふ道狭まりし 長屋璃子(ながやるりこ)
梅の香を運ぶ瀬音のありにけり 山尾かづひろ
尾鷲歳時記(108)
犬と猫の話
内山思考
盆梅や百才にして力瘤 思考
近所で飼っていたクーはとてもおとなしい柴犬だったが、十数年の長寿を極め昨年とうとう居なくなった。どれほどおとなしかったかというと、まず大声で吠えたためしがなく、遠くに余所犬が見えたとき軽く誰何するのと、たまに飼い主に風呂場で洗濯?されて悲しげに拒否の意志をアピールするぐらいのものであった。クーがいた玄関先には今、主人のバイクが座っている。路地には他にも何軒かに犬がいるが、室内犬ばかりだから、郵便屋さんや宅配の人に激しく吠えたてる声の存在でしかない。子供もあまりいないからここは割に静かな場所なのである。
来し方を思い起こせば、わが家は母が動物嫌いで、周囲に犬も猫も近づけることをしなかった。でも僕が小学三年のとき一度だけ雑種の犬を飼ったことがある。あの母がよく了承したものだといまだに不思議だ。クロという名のその犬が餌を食べているとき手を出してかまれたり、車にはねられて骨折したからと父と二人で獣医に連れて行ったのも懐かしい記憶である。翌年の春に父の転勤が決まり、先に引っ越した僕が父とクロの到着を首を長くして待っていたら、来たのは父だけ、なんと途中で逃げられたというではないか。僕は怒り、失望したがやがて犬を飼っていたことを忘れてしまった。本当は、クロは父に捨てられたのだということを知ったのはずいぶん大人になってからの話である。
姉はその点、旦那が犬好きだったせいもあってか、コーギーというあまり小さくもない洋犬を家族代わりにしている。たまに僕が行って腹を掻いてやるともっとせよ、とねだる。姉は笑って見ている。犬の話ばかりになってしまったが猫もなかなか面白い存在だ。去年だったか熊谷守一の猫の絵ハガキを猫好きの知人に出したら返事が来て、その文面に「どうも有り難う。実は私は幼少の頃、熊谷守一に可愛がられて育ちました。画伯を『お爺ちゃん』と呼んでました」とあって大いに驚いたものである。
内山思考
盆梅や百才にして力瘤 思考
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熊野古道センターにあった木製玩具 作成・畑中木工 |
近所で飼っていたクーはとてもおとなしい柴犬だったが、十数年の長寿を極め昨年とうとう居なくなった。どれほどおとなしかったかというと、まず大声で吠えたためしがなく、遠くに余所犬が見えたとき軽く誰何するのと、たまに飼い主に風呂場で洗濯?されて悲しげに拒否の意志をアピールするぐらいのものであった。クーがいた玄関先には今、主人のバイクが座っている。路地には他にも何軒かに犬がいるが、室内犬ばかりだから、郵便屋さんや宅配の人に激しく吠えたてる声の存在でしかない。子供もあまりいないからここは割に静かな場所なのである。
来し方を思い起こせば、わが家は母が動物嫌いで、周囲に犬も猫も近づけることをしなかった。でも僕が小学三年のとき一度だけ雑種の犬を飼ったことがある。あの母がよく了承したものだといまだに不思議だ。クロという名のその犬が餌を食べているとき手を出してかまれたり、車にはねられて骨折したからと父と二人で獣医に連れて行ったのも懐かしい記憶である。翌年の春に父の転勤が決まり、先に引っ越した僕が父とクロの到着を首を長くして待っていたら、来たのは父だけ、なんと途中で逃げられたというではないか。僕は怒り、失望したがやがて犬を飼っていたことを忘れてしまった。本当は、クロは父に捨てられたのだということを知ったのはずいぶん大人になってからの話である。
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ちびくろさんぼのパズル (トラもネコ科ということで) |
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