2014年1月19日日曜日

2014年1月19日の目次

■ 俳枕 江戸から東京へ(159)
       山尾かづひろ  読む

■ 尾鷲歳時記(156)
       内山 思考    読む

俳枕 江戸から東京へ(159)

山手線・日暮里(その59)
根岸(上根岸82番地の家(42)「子規庵」)
文:山尾かづひろ 
 

鷗外荘









都区次(とくじ):今日はどこへ行きますか?
江戸璃(えどり):不忍池は池畔の道路に戻って、まず右側の五条天神社と花園稲荷神社を拝むわよ。
 
鷗外荘尋ね来たりし女正月 吉田ゆり
 
江戸璃:つぎに動物園のモノレールをくぐってすぐ、水月ホテル鷗外荘というホテルが左側にあるわね。中庭に森鷗外の旧居を現存することで有名なホテルなのよ。宿泊しなくても見せてくれるから見て行きましょう。鷗外は新婚当時この家に住んでいたのね。よく知られている団子坂上の観潮楼に住んだのはずっと後の話なのよ。ホテルの少し先の三階建ての家、モルタルの飾りやイオニア風の飾り柱など、どう見ても1920年代の家よね。20年前に大矢白星師に案内してもらった時には何の説明板もなかったけれど、今は「上田邸」という名前で東京都指定歴史的建造物となっていて、昭和4年完成の建物で、以前、忍旅館として営業していて、「花園町(現在池之端)の白さぎ城」として親しまれていたそうよ。
都区次:ところで今日はどこへ行きますか?
江戸璃:寒いわね。銀座8丁目の「維新號」で紹興酒の熱燗を飲みたくなっちゃった。
都区次:いいですね。行きましょう。
 
上田邸













風無きにゆるる宮居の初灯   長屋璃子(ながやるりこ)
本園へモノレール入る冬木越し 山尾かづひろ


尾鷲歳時記(156)

那覇を歩く男 
内山思考

一月の川ビル街に消え海へ 思考



市営住宅の下は亀甲墓




一週間ほど前から町歩きを始めた。もし誰かに「ウォーキングですか?」と問われれば僕はへそ曲がりだから「違います、ただ歩いているだけです」と答えるだろうが、結局は同じことである。つまりスポーティーなイメージでは無いと言いたいわけだ。きっかけはごく単純で、空腹を感じなくなったから。原因は那覇に来てからののんびり生活にある。ヒロコさんやタカシさんとどこかに遊びに行く以外は全くのフリーで、最小限の原稿書きと洗濯、食器洗いをするだけ、後は読書三昧だからエネルギーの消耗は皆無に近い。

炭焼き仕事で腹を減らし、待ちかねた昼に二合飯の弁当を掻き込んでいたのが嘘のようである。で考えた。恵子は静養が仕事のようなものだからじっとしていればいい。じゃあ、一人で歩いてみよう、と。目標は一日一万歩、今のケータイは万歩計機能があるから便利だ。最初の日、地理がよくわからないので、大きな通りを選んで歩くことにした。「行ってきます」「行ってらっしゃい」 昼過ぎに安謝のアパートを出て坂を下り、コジマの角を左折、6車線の58号線を右に見ながら南下し、1キロほど歩いたところで上之屋交差点を左折、左手にいつも買い物をするリウボウを見ながらひたすら歩を稼ぐ・・・。
 
ゆいレールの曲線
やがて右には沖縄県立博物館、このあたりは新都心と呼ばれ、郊外ながら活気に満ちている場所である。ああ空が広い、青い。そして「おもろまち」から「ゆいレール(モノレール)」の下を古島インター目指してなお前進。「こりゃいいな」 初日一万五百歩。 車を運転していてはわからない景色も楽しめることに気づいた僕は、それから日ごとに距離を伸ばして行った。
 
銘苅(めかる)、真嘉比(まかび)、勢理客(じっちゃく)、東風平(こちんだ)、南風原(はえばる)など地名の標識も興味深い、足取りは軽い。ついつい遠出して二万三千歩の日もあり、足腰の心地良い張りと共に食欲が回復したのは言うまでもない。さあ明日はどこまで行こうか。