2015年11月8日日曜日

2015年11月8日の目次

■ 俳枕 江戸から東京へ(253)
       山尾かづひろ  読む

■ 
尾鷲歳時記(250)
       内山 思考    読む

俳枕 江戸から東京へ(253)

小松川・境川親水公園
文:山尾かづひろ  
挿絵:小川智子  

皀莢














都区次(とくじ):先月の末に江戸璃さんは上野広小路で半歌仙の連句を巻いたそうですね?

江戸璃(えどり):そうなのよ。小山陽也さんが席をセットして下さってね。小山陽也さん、飯田孝三さん、光成高志さん、光みちさん、山尾かづひろ、と江戸璃こと長屋璃子の6人でね。

白金葭(はっきんか)の白穂の靡く秋高し  高志
けふの月夜の早仕舞らし     かづひろ
広小路のほとり日和の菊の酒  孝三
御馳走に胃の腑驚く暮の秋   璃子
今日いちにちの齢を忘れて   みち
烏瓜蔓の傍らごみ埋める     陽也
柊の花の生垣立ち止る      高志
妖精と見ゆ白き花々        かづひろ
下町の甍のくねりを犬連れて   孝三
料亭の菊一輪の造花にて     璃子
鱧を戴き和牛もいただき      みち
あたりくじ四人は豪華くじのはずれし二人は水のむ 陽也
妙齢の和服後に菊匂ふ      高志
男装の麗人一人居り        かづひろ
たまさかは禿頭の髪晴着の間   孝三
色紋付きの背ナを見せ       璃子
かさかさと二階の喫茶秋惜しむ  みち
十三人は和服着て          陽也

都区次(とくじ):前回は江戸川区の善養寺(小岩不動)でしたが、今回はどこですか?

江戸璃:善養寺(小岩不動)の帰りに近くの新小岩を冷やかしに覗いてみたら思ったより良かったので本気で行く気になったわけ。というわけで私の独断と偏見で小松川・境川親水公園へ行くわよ。

青年は鷗外ならむ落葉坂     戸田喜久子
石組の石の明るし石蕗の花   柳沢いわを
ポケットから木の実いろいろ取出す 福田敏子
小松川ふくら雀はメタボかな   石坂晴夫
一人居の相撲部屋あり咳一つ  甲斐太惠子
小流れに色を零して紅葉晴    白石文男
早瀬へと招かれている秋の風  油井恭子
川底を流る擬餌鉤秋澄めり    近藤悦子
とち狂ふ鳥は阿修羅よ枇杷の花 石坂晴夫
せせらぎの波紋乱れず冬に入る 白石文男
小流れの分れの小道神無月   甲斐太惠子

江戸璃:アクセスだけれど総武線の新小岩駅から徒歩10分ほどよ。

日輪の一と日遊べり花芒   長屋璃子
男には捨てし故郷と枯野あり 山尾かづひろ

尾鷲歳時記(250)

冬に入る
内山思考 

猿百匹描き賀状を書き終わる  思考

毎年恒例のフリーハンド








月並みな言い方だけれども暦の上では冬になった。とは言え、身の回りを見渡しても冬を感じさせる事象はほとんどないと言っていい。確かに朝晩は少し寒さを感じる。しかし日中が快晴だともともと風のあまり吹かぬ当地であるから、日差しを暑く眩しく思ったりもするぐらいだ。そうだ真冬の那覇に似ている。岩手の藤沢さんのメールでは先週、冬用タイヤに履き替えたとか。いつ雪が降るかも道路が凍るかもわからない時期になったということだろう。狭くても南北に長い国土を持つ日本ならではのタイムラグである。

でもひとつだけ冬らしい作業を始めた。年賀状を書くことだ。ちょっと気が早いのは承知の上、師走になると息子に子供が生まれる予定で、初孫と対面したら本当に寒くなる前に今季も安謝のアパートで避寒生活を始めたい。だから年賀状を書いて置かねばという算段だ。

「孫が出来るのに(沖縄へ)行くんかい!」と息子は呆れるが惠子も思考も口を揃える。「観光で行くんちゃう(違う)で、養生や」。昨年、腎移植をしたあと体に痛みが出て、入退院を繰り返していた惠子が元気になったのも、尾鷲の冷えを逃れて春先まで沖縄生活をしたお蔭だと僕は思っている。でも初めての孫の誕生が嬉しく無いわけはない。本当は考えるたびにドキドキしているのだ。「なんて名前になるんだろう」 それも気になって、一応無関心を装っているものの「キラキラネームはあかんで」「わかっとる」などと言う惠子と息子の会話に耳をそばだてたりもする。

年忘れの軸にかえた
さて賀状の話、来年の干支は猿だが山の麓にあるわが町はサルの出没が多く、うっかり無施錠で留守をし、帰宅したら炬燵に入って蜜柑を手にテレビを見ていたとか、風呂の扉を開けるとサルが湯船に浸かりしかも頭にタオルを乗せていたなど、数々の逸話が報告されている。内山家も幾度か被害にあい、そんな風だから憎たらしいサルの絵にしてやろうと思ったら、描くうちに何だか自分の顔に似ているような気がして来たのだった。