2015年7月5日日曜日

2015年7月5日の目次

■ 俳枕 江戸から東京へ(235)
       山尾かづひろ  読む

■ 
尾鷲歳時記(232)
       内山 思考    読む

俳枕 江戸から東京へ(235)

水元公園
文:山尾かづひろ 

水元公園









江戸璃(えどり):早いものね、明後日の7月7日は七夕よ。

七夕や母さん竹を伐(き)りに行こ  武内杉菜
七夕や笹の匂ひの懐かしき      依田史子

都区次(とくじ): ところで前回の6月28日は石神井公園近くの三宝寺でした。

漫(そぞ)ろゆく石神井城址えごの花  窪田サチ子

都区次:今回はどこですか?

釣り人に青鷺忍び寄る岸辺  藤本明子

江戸璃:葛飾区の水元公園へ行くわよ。先月のはじめに大矢白星師が花菖蒲を眺め、葭切を聞きたいと水元公園へ出掛けて行ったのよ。

シンボルの水元大橋走り梅雨    大矢白星
葭切や雨を喜ぶ鳴きっぷり     小川智子
雨上がりきりきりしゃんと花菖蒲  小林道子
雨しとど凛と面上げ花菖蒲     寺田啓子
睡蓮の葉を打つほどの雨となり   小倉修子

江戸璃:というわけで私の独断と偏見で水元公園へ行くことにしたのよ。JR常磐線の金町駅から京成バスで公園の近くまで行くわよ。この地域は元々が古利根川の河川敷だったのよ。古来、利根川は太平洋ではなく、現在の東京湾に注いでいてね。現在のような流れになったのは、徳川家康によって東京湾から銚子へと流れを替える「利根川東遷事業」と呼ばれた工事が行われた結果なのよ。東遷事業の目的は、江戸を利根川の水害から守り、新田開発を推進すること、舟運を開いて東北との経済交流を図ることに加えて、伊達政宗に対する防備の意味もあったと言われているわね。大工事だから、家光の代にまで蛇行部分の一部が古利根川として残っちゃったのね。その蛇行部分をまとめたのが人工川の江戸川なのよ。というわけでこの地域は元々が古利根川の河川敷だったのよ。古利根川は廃止されたため、小合村が江戸幕府の許可を得て埋め立てて耕作地として、水を蓄えて小合溜と称して管理してきたわけ。それを戦後、東京都が買収して都立公園として整備したのよ。

萍や旅へいざなふ水の影   高橋みどり
草茂り水面遠のく水の郷   石坂晴夫
翡翠の青く飛び込む一直線  甲斐太惠子 
水郷の梅雨晴光る白き鷺   近藤悦子
その下に亀の気配の青みどろ 白石文男
黄昏の沼の湿りに行々子   油井恭子

江戸璃:日曜日は京成のシャトルバスが公園の手前まで来るから、それで帰るわよ。

水元大橋











水元の誇り声高行々子      長屋璃子
淀むとも淀まざるとも梅雨の沼  山尾かづひろ

尾鷲歳時記(232)

飲み物について 
内山思考 

蹴球を言語としたり汗の民   思考

冷水出し
煎茶がいける













ワールドカップでのサッカー日本女子の勇猛な戦いぶりは見事なもので、これを書いている時点で最終的な結果は不明だが、充分に列島の庶民を力づけているに違いない。僕もその一人だ。テニスの錦織圭選手の存在も誠に頼もしく感じている。本当はスポーツ以外にだってそんな要素が欲しいところだが、急に思い浮かばないのは甚だ残念な昨今である。

今回は飲み物の話、運動選手は消耗した水分を補う為に、競技中によくドリンクを飲んでいる。昔はいざ知らず、近年は多分普通の水ではなく、俗に言うスポーツドリンクが主流のようである。個人に合わせたスペシャルドリンクもあるらしい。スポーツではないが、夏場の炎天下に備長炭の原木を伐り出しに行っていた頃は、麦茶が一番だった。

Tシャツを脱いで絞ればザーッと流れるほど汗をかくと、時には3リットル以上も水分をとる。そんな時は薄くても甘さや酸味があるとどこかあと口が良くない。水はダイレクトだし緑茶は飲み過ぎると胃が悪くなる。山を下りてウバメガシ満載のトラックで走り出すと、今度は道端の販売機の冷えたコーラが命の水に思えた。コンディションによって欲求と効果が異なると言うことだろう。

昔、母親が山仕事から汗だくで帰って来て、装束のまま砂糖水を作って飲んでいたのを思い出す。「あー美味しい」の声も耳に残っている。

日本一静かな村の砂糖水   思考 

青木健斉作の茶杓
人類の水分摂取百態、マラソンの給水所での緊迫した給水風景は競技の一つのアクセントにもなっている。動中の刹那は例えば陸上リレーのバトン渡しの緊張感にさも似たり。僕は錦織選手が、ゲームの合間にセンターコートの横のベンチに座って、薬缶から直接水を呑む姿も悪くはないと考えるが、多分そんな映像を見る機会は無い。腕が疲れるし噎せでもしたら大変だ。安謝のヒロコさんの電話では梅雨が開けた沖縄は毎日暑いそうだ。尾鷲の梅雨はもうしばらく続くだろう。