■ 俳枕 江戸から東京へ(242)
山尾かづひろ 読む⇒
■ 尾鷲歳時記(239)
内山 思考 読む⇒
2015年8月23日日曜日
俳枕 江戸から東京へ(242)
平林寺
文:山尾かづひろ
江戸璃(えどり):大矢白星師は今月のはじめに鷺草の見頃となった九品仏の浄真寺へ行ってきたそうよ。
開放の上品(じょうぼん)三仏拝す夏 小林道子
上品の弥陀座す御堂秋めきぬ 寺田啓子
こんもりと奥沢城址木下闇 窪田サチ子
鷺草の汚れなき白法の庭 小倉修子
鷺草の朝風に揺れ飛ばんとす 梅山勇吉
鷺草の咲き揃ふ時訪ねけり 小川智子
鷺草や白きっぱりといさぎよし 宮島桂子
小流れあり造り滝あり鷺草に 大矢白星
江戸璃:早いわね、今日は処暑よ。
都区次(とくじ):ところで前回は武州御岳山でしたが今回はどこですか?
手の届くところで鳴きぬ秋の蝉 戸田喜久子
江戸璃:武蔵野の秋に触れたくなったので、私の独断と偏見で平林寺へ行くわよ。
総門を閉ざして古刹松手入れ 内海よね女
総門を入るやそこはか秋の声 江川のぼる
禅林の深さ静けさ秋の蝉 笈沼はるを
白萩のしとどに散りて雨のあと 奥山千代子
雪崩るるを乱れと言はず萩白し 小林草吾
彳づみて秋の声聞く九十九塚 柳沢いわを
江戸璃:東上線の志木駅からバスに乗って平林寺まで行くわよ。
作務僧の肩を濡らして秋時雨 油井恭子
学僧ら伽藍を後に月夜かな 甲斐太惠子
山門は入母屋造り花擬宝珠 高橋みどり
野火止の水面いささか澄み初めし 近藤悦子
新涼や声明響く杉木立 白石文男
軒下の農具色々秋醸す 石坂晴夫
江戸璃:よく歩いたけれど、武蔵野の秋を感じてよかったわね。
どんぐりや作務衣の僧等二三人 長屋璃子
向日葵の崩れ汚した風の辻 山尾かづひろ
文:山尾かづひろ
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平林寺 |
江戸璃(えどり):大矢白星師は今月のはじめに鷺草の見頃となった九品仏の浄真寺へ行ってきたそうよ。
開放の上品(じょうぼん)三仏拝す夏 小林道子
上品の弥陀座す御堂秋めきぬ 寺田啓子
こんもりと奥沢城址木下闇 窪田サチ子
鷺草の汚れなき白法の庭 小倉修子
鷺草の朝風に揺れ飛ばんとす 梅山勇吉
鷺草の咲き揃ふ時訪ねけり 小川智子
鷺草や白きっぱりといさぎよし 宮島桂子
小流れあり造り滝あり鷺草に 大矢白星
江戸璃:早いわね、今日は処暑よ。
都区次(とくじ):ところで前回は武州御岳山でしたが今回はどこですか?
手の届くところで鳴きぬ秋の蝉 戸田喜久子
江戸璃:武蔵野の秋に触れたくなったので、私の独断と偏見で平林寺へ行くわよ。
総門を閉ざして古刹松手入れ 内海よね女
総門を入るやそこはか秋の声 江川のぼる
禅林の深さ静けさ秋の蝉 笈沼はるを
白萩のしとどに散りて雨のあと 奥山千代子
雪崩るるを乱れと言はず萩白し 小林草吾
彳づみて秋の声聞く九十九塚 柳沢いわを
江戸璃:東上線の志木駅からバスに乗って平林寺まで行くわよ。
作務僧の肩を濡らして秋時雨 油井恭子
学僧ら伽藍を後に月夜かな 甲斐太惠子
山門は入母屋造り花擬宝珠 高橋みどり
野火止の水面いささか澄み初めし 近藤悦子
新涼や声明響く杉木立 白石文男
軒下の農具色々秋醸す 石坂晴夫
江戸璃:よく歩いたけれど、武蔵野の秋を感じてよかったわね。
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作務僧 |
どんぐりや作務衣の僧等二三人 長屋璃子
向日葵の崩れ汚した風の辻 山尾かづひろ
尾鷲歳時記(239)
晩夏の戯れ言
内山思考
光速のあと音速の遠花火 思考
とにかく日々の暑さばかり嘆いていたら、お盆を過ぎた途端に人間で言うなら人が変わったみたいに曇りがちの天気が続くようになった。キョトンとかケロッとかの擬音が似合う空の表情の変わりようだ。そうなればなったで、輝く青空と屹立する入道雲が妙に懐かしかったりするから勝手な話である。夏の神様が「もうワシもたまらんわ」とでも思ったのだろうか。「秋よ早く代わってくれよ」と。とかくこの季節は風神雷神にも方々からお呼びがかかって応対にてんてこ舞い、「ああ忙しい」「ああ忙しい」と飛び回っているところを想像して、それを題材にしたら昔話が一つ出来そうだと考えたりもする。
しかし朝晩めっきり(この形容も面白い)涼しくなった・・・わけではまだない。昨日、蕪村と若冲の特別展を観るために滋賀県信楽(しがらき)町のミホ・ミュージアムまで足を伸ばしたが、そこもまだまだ漂う気配は初秋というより晩夏の匂いの方を強く感じた。例の大小さまざまの陶器の狸たちも、大福帳やら何やらをぶら下げ大義そうに口を開けて街道のそこここに並んでいたっけ。
「盆の挨拶」 一年をループ状に考えると六月で折り返して、八月はグンと加速するところだ。これからは月日が早く流れる(ような気がする)。お盆はそこいらの知り人が帰省してくるので、顔を合わせると久闊の挨拶を交わす。しかし、正月のように「明けましておめでとう」といった形式だった挨拶はない。
「こんにちは」「久しぶり」「大きくなったね」などは年中使えるから、盆専用の挨拶を考えてみた。ただし冗談。まずお墓参りなどお盆の約束事を行ったあとは互いに、「せし盆(セシボン)」と言う。いつまで休みなのと聞くときは、「盆中居るの(ボンジョールノ)?」 お坊さんは来ましたか、は 「梵僧は(ボンソワール)?」といった具合だ。フランス語に似ているのは仕方が無い。仏語には違いないのだから。
内山思考
光速のあと音速の遠花火 思考
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暑い時こそきつねうどん |
とにかく日々の暑さばかり嘆いていたら、お盆を過ぎた途端に人間で言うなら人が変わったみたいに曇りがちの天気が続くようになった。キョトンとかケロッとかの擬音が似合う空の表情の変わりようだ。そうなればなったで、輝く青空と屹立する入道雲が妙に懐かしかったりするから勝手な話である。夏の神様が「もうワシもたまらんわ」とでも思ったのだろうか。「秋よ早く代わってくれよ」と。とかくこの季節は風神雷神にも方々からお呼びがかかって応対にてんてこ舞い、「ああ忙しい」「ああ忙しい」と飛び回っているところを想像して、それを題材にしたら昔話が一つ出来そうだと考えたりもする。
しかし朝晩めっきり(この形容も面白い)涼しくなった・・・わけではまだない。昨日、蕪村と若冲の特別展を観るために滋賀県信楽(しがらき)町のミホ・ミュージアムまで足を伸ばしたが、そこもまだまだ漂う気配は初秋というより晩夏の匂いの方を強く感じた。例の大小さまざまの陶器の狸たちも、大福帳やら何やらをぶら下げ大義そうに口を開けて街道のそこここに並んでいたっけ。
「盆の挨拶」 一年をループ状に考えると六月で折り返して、八月はグンと加速するところだ。これからは月日が早く流れる(ような気がする)。お盆はそこいらの知り人が帰省してくるので、顔を合わせると久闊の挨拶を交わす。しかし、正月のように「明けましておめでとう」といった形式だった挨拶はない。
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クールなハーブ 虎の尾 |
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