2014年1月12日日曜日

2014年1月12日の目次

初心者俳句講座 開講のご案内
■ 俳枕 江戸から東京へ(158)
       山尾かづひろ  読む

■ 尾鷲歳時記(155)
       内山 思考    読む

初心者俳句講座 開講のご案内

現代俳句協会主催
初心者俳句講座 開講のご案内


参加できるのは、現在、現代俳句協会に加入していない方々が対象となります。
参加資格等下記をご覧下さい。
また会員の皆様のお知り合いで、俳句に興味をお持ちの方に参加をお勧めいただければ幸いです。

◇開催日時と回数:月1回、第4土曜日の午後1時~4時(3時間予定)
 回数は年10回(8月および12月は休会)

 第1回開催 4月26日(土)

◇会  場:現代俳句協会 図書室

◇募集人数:20人(現代俳句協会に未加入者の方が対象)

◇参加費用:年会費15,000円

     (一括先払いで、途中解約・途中入会なし)

◇講  師:後藤 章

◇申 込 先:電子メール、ファックス、葉書などで下記へ

 〒101−0021 東京都千代田区外神田6−5−4偕楽ビル7階 
    現代俳句協会企画部

◇お問合せ:電話 03−3839−8190/FAX 03−3839−8191
      電子メール gendaihaiku@bc.wakwak.com

◇企画運営:現代俳句協会 企画部

俳枕 江戸から東京へ(158)

山手線・日暮里(その58)
根岸(上根岸82番地の家(42)「子規庵」)
文:山尾かづひろ 


弁天堂









都区次(とくじ):今日はどこへ案内してくれますか?
江戸璃(えどり):正岡子規に「蓮枯れて夕栄(ゆうばえ)うつる湖水哉」という不忍池を詠んだ句があるので、不忍池へ行くわよ。

泉水を琵琶湖に見立て枯蓮 畑中あや子

江戸璃:不忍池辺り一帯は縄文時代ごろ東京湾の入江だったそうよ。その後の海岸線の後退とともに取り残されて、紀元数世紀ごろ池になったと考えられているのね。江戸城の鬼門除けとして寛永寺が上野に建立されると、京都の鬼門(北東)を守る比叡山に対して、「東の比叡山」という意味で山号を「東叡山」としたのよ。開祖である天海僧正は東の比叡山にも、琵琶湖がなくてはならない、とばかりに不忍池を琵琶湖と見立て、竹生島(ちくぶしま)になぞらえて弁天島を築かせて弁天堂を造ったのよ。弁天島にはめがね塚、ふぐ供養碑、琵琶の碑など珍しいものが多いのだけれど、大矢白星師が更に珍しいものがあると、弁天島の北側に付随している聖天島に一行を案内してね、私もいいのかなと思ったのだけれど鉄の閂(かんぬき)を勝手に開けて中に皆で入っちゃったのよ。その聖天島の北側には役行者(えんのぎょうじゃ)像があってね、白星師は私だけに向かって、うしろ姿がどう見ても男性のシンボルに見えるというのよ。私も別の場所でこういうのを見て知っているわよ。でも一行に山の手の若奥様が多く参加している中で、白星師と「一物」の談義なんかできないわよネ。
都区次:ところで今日はどこへ行きますか?
江戸璃:山下の寄席の鈴本を見て、神田の「いせ源」の鮟鱇鍋で熱燗を飲みたくなっちゃった。
都区次:いいですね。行きましょう。

役行者の表・裏










山下の寄席の至芸や独楽廻し  長屋璃子(ながやるりこ)
広小路たそがれ色の寒九かな  山尾かづひろ

尾鷲歳時記(155)

金の繭、銀の雫
内山思考

午年をもて生き様を牛歩とす  思考

オオゴマダラの輝くさなぎ








正月中は近くのマーケットに買い物に行く以外は、出歩かなかった。それでなくても交通量の多い那覇の周辺だ。年末年始ともなれば観光客帰省客の増加と共に車の数も増える。混雑するのを承知で慣れない土地を走り回る気にはなれなかった。でも新聞はとって無いし、年賀状は沖縄の住所を知る数人から来ただけ、尾鷲に届いた分はまとめて息子が送ってくれることになっているから、することといったらテレビを見るのと本を読むだけ。そののんびりを恵子と楽しむためにやってきたのだと割り切り、松の内が過ぎてからやっとヒロコさんを誘って遠出をした。

場所は本部町の「琉宮城蝶々園」である。美ら海水族館の近くだが案外知られていない。真冬だしそれほど期待してなかったが、デカい温室に入って驚いた。熱帯樹木のあいだをオオゴマダラ蝶が無数に乱舞しているのだ。赤色を好む習性があるそうで赤い造花にそれこそ花びらのようにとまっている。触れても逃げない。驚きはまだあった。オオゴマダラのさなぎは純金の光沢を持っているのである。自然界の摂理なのにそれを不自然と思うのは、人間の身勝手な錯覚に過ぎないのだろうか。

翌日はタカシさんと玉泉洞に出掛けた。二度目だが、全長5000㍍(公開は890㍍)の鍾乳洞もやはりミステリーゾーンであった。洞窟内の気温は21℃で暑からず寒からず、タカシさんはここが観光地になる前の調査の段階で、入洞した経験のある人だ。「真っ暗闇の中を腰まで水に浸かってね」狭い遊歩道を歩きながら記憶を辿るタカシさんと僕の側を、台湾人と思われる若い女性たちが賑やかにすり抜けて行く。

玉泉洞の鍾乳石は
百万本以上
数え切れない鍾乳石によって形作られる複雑な天地、そして永劫の時空を一瞬よぎる流星のような水滴。感慨深くはあるが地上は昼過ぎ、出口まで400メートルの標識を見るといよいよ空腹がつのる。そして考えたのは、己の身体の洞穴(胃袋)をいかにして満たすべきかということだった。