2014年3月16日日曜日

2014年3月16日の目次

■ 俳枕 江戸から東京へ(167)
       山尾かづひろ  読む

■ 尾鷲歳時記(164)

       内山 思考    読む

俳枕 江戸から東京へ(167)

山手線・日暮里(その66)
根岸(上根岸83番地の家(48)「子規庵」)
文:山尾かづひろ 


天竜院










都区次(とくじ):前回は三崎(さんさき)坂の永久寺でしたが、今日はどこへ案内してくれますか?

山内の墓紅梅の日溜りに 佐藤照美

江戸璃(えどり):今回も大矢白星師に案内してもらった三崎坂の寺で天竜院へ行くわよ。
江戸璃: 臨済宗妙心寺派寺院の天竜院は、海雲山と号してね。天竜院は、梅岩西堂和尚(承応2年1653年寂)が寛永7年(1630)神田に創建、慶安元年(1648)神田寺町へ、元禄14年(1701)当地へ移転してきたそうよ。江戸時代には正月に梅の花を幕府に献上していたそうね。この山内には幕末の蘭方医、伊藤玄朴(いとうげんぼく)夫妻の墓があるのよ。白星師に案内してもらった20年ほど前はシーボルト生誕200年でね、色々な行事があったり、記念切手が発行されたりしたのよ。玄朴はこのシーボルトに師事してね。後に神田お玉ヶ池のほとりに私設種痘所を開設したのよ。
都区次:日が暮れてきましたが、今日はどこへ行きますか?
江戸璃:話が神田に飛んだから、「肉の万世」で熱燗を飲みたくなっちゃった。春寒だしね。
都区次:いいですね。行きましょう。


伊藤玄朴の墓













霾やしあはせ色の黄に遠し 長屋璃子(ながやるりこ)
神田川橋の灯りて冴え返る 山尾かづひろ

尾鷲歳時記(164)

ミカンとクニブ
内山思考


俳人は歩き画人は座る春     思考

ミカンいろいろ、右上にブラッドオレンジ









ここしばらく我が家のテーブルにミカンの乗ってない日はない。このあたりは温暖な地域だから、他の果物と違ってミカンは買わずともあちこちから頂くことの方が多いのである。有り難い話だ。物がいっぱいある状態を尾鷲弁では「よれとる」という。「寄れとる」か「縒れとる」かよくわからないが、今のところ内山家には「ミカンがよれとる」のである。

種類はと言うとまず文旦、これだけは先週、伊良湖岬で買ってきた。それから知人に貰ったブラッド・オレンジと日向夏(だと思う)に大きな「晩白柚」、昨日、近所に住む従兄が「取んに来うい」と電話してくれた無農薬の甘夏と、同じく昨昼、リンゴジャムを作った時、仕上げに必要なので路地奥のTさんの畑から頂戴したレモンなどである。いずれも「サッパリサワー」系列の柑橘類だ。これが最近までは「ポンカン」「デコポン」「清見」あたりの濃厚系がよく手に入った。

Tさんはミカン採らないから
レモンもゴロゴロしている
2月3月と風の色合いが知らぬ間に変わるように、ミカンもさまざまな品種が微妙な時間差で市場に出回るのは毎年のことである。沖縄でミカンの話をした時、タカシさんが「クニブ」と言ったので、「ああ九年母のことやね」と相槌を打ったら、違うよ沖縄ではクニブはミカンの総称なんだよ、と教えられた。あの酸っぱいシークァーサーも美味なるタンカンもクニブ、なんだそうである。「今帰仁の城(ぐすく)/しもなりの九年母/しけま乙樽が/ぬきやいはきやい・琉歌より」